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更新日:2020年12月4日

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七尾市・中能登町合同特集
障害がある人の「働きたい」を考える

12月3日から9日は、障害者への理解を深めてもらうことを目的に制定された「障害者週間」です。

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障害がある人の数は、全国で約936万人といわれ、七尾市で障害者手帳を保有する人の数は約3400人です。手帳を持っていなくても配慮を必要とする人もいます。地域や学校、職場を見渡せば、何らかの障害がある人がいることは普通のことです。

今回の特集では「障害者週間」に合わせて障害がある人の就労を取り上げます。「働きたい」という気持ちを後押しし、安心して働ける環境を一緒に考えませんか?

「障害」と「働く」

障害のある人が自立した生活を送るには、働くことも必要ですが、不安も伴います。雇用者側にも「どんな業務を任せたらいいか」という悩みがあるのではないでしょうか。しかし、障害がある人にとって働く場は「やりがいを感じられる場」であり、「人や社会とつながりを持てる場」なのです。障害があっても生き生きと働くためには、周囲の理解やサポートが必要です。

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地域の事業所をつなぐ総合窓口
ななお・なかのと就労支援センター開設

障害がある人の働く場には、一般企業で雇用契約を結ぶ「一般就労」と障害福祉サービス事業所(以下、事業所)で能力に合わせた作業に取り組む「福祉的就労」があります。福祉的就労に取り組む事業所では、企業から委託された作業や自主製品の製造をしていますが、事業所の職員は「もっと仕事が欲しい」と口をそろえます。そんな声に耳を傾けたのが、七尾商工会議所青年部の地域向上委員会。令和元年7月に、同委員会に所属する瀧の川運輸株式会社の瀧川(たきかわ)嘉明(よしあき))さんが、有志とともに「ななお・なかのと就労支援センター」を立ち上げました。

同センターは、企業などから仕事を請け負い、複数の事業所に仕事を割り振る総合窓口です。これまでは、それぞれの事業所が直接仕事の依頼を受けていましたが、一つの事業所では作業できる人数が限られ、引き受けられない仕事がありました。そういった悩みも同センターができたことで解消。複数の事業所に声を掛け、その現場に合う人をそれぞれ出してもらい、人手が必要な仕事も受けることができるようになりました。

(写真説明)就労継続支援事業所「シフト」の利用者と職員、(株)能登風土(のとふうど)三次水産牡蠣養殖場谷口(たにぐち)忍(しのぶ)さん

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ななお・なかのと就労支援センター

(写真説明)ななお・なかのと就労支援センター代表理事瀧川(たきかわ)嘉明(よしあき)さん(左)、ぱいんの家木谷(きや)昌平(しょうへい)さん(右)

仕事がないなら、つくればいい
七尾商工会議所青年部が奮闘

メンバーの声をきっかけに開設

きっかけは、平成30年に七尾商工会議所青年部のメンバーから「障害のある家族がいる。そんな人の力になれる活動ができないか」と相談を受けたことだと瀧川(たきかわ)さんは振り返ります。まずは障害がある人への理解を深めようと、親交のあった「ぱいんの家」の木谷(きや)昌平(しょうへい)所長に声を掛け、七尾市と中能登町の事業所の職員などを講師に招いた勉強会やアンケート調査を実施。勉強会を続けるうちに、事業所が抱える課題や企業側の障害者雇用に対する思いが見えてきました。

そんな中、瀧の川運輸株式会社が七尾駅前商業施設パトリアで閉店するテナントの引っ越し作業を請け負いました。瀧川さんは「テナントがある2階からトラックまで、荷物を運ぶ仕事を障害のある人にも手伝ってもらえばいいかもしれない」と思い付き、木谷(きや)さんに提案。二つの事業所の利用者や職員が集まり、互いに協力しながら段ボールの搬出などに汗を流しました。

「障害のある人にもできる仕事はたくさんある」と実感した瀧川さん。木谷(きや))さんは「これまでは作業料金を安く提示してしまいがちだった。瀧川さんが企業に県の最低賃金以上の料金を交渉してくれたので、働く意欲につながった」と手ごたえを感じていました。

「仕事がないなら、つくればいい」。企業と事業所のかけ橋になるべく、ななお・なかのと就労支援センターが動き出しました。企業からの仕事を瀧川さんが受け、木谷さんに相談。木谷さんは事業所に声を掛け、複数の事業所で仕事を請け負います。

障害福祉サービス事業所の課題

  • 作業料金が安い
  • 新たな販路が見つからず、自主商品の収益力が上がらない
  • 内職の仕事は利益が少ない

企業側の思い

  • 障害者雇用を受け入れる余裕はないが、何かしたい気持ちはある

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意欲的に働く事業所利用者

同センターで引き受けた仕事の一つが、ホテル海望での清掃作業。現在4つの事業所で分担し、1日2人ずつ週に6日、ロビーや階段などの共用部分の清掃作業に励んでいます。

取材に伺った日は、「みのり園」の利用者2人が仕事をしていました。端から丁寧に掃除機をかけ、黙々と仕事に取り組む姿が印象的でした。同行した事業所の職員は「施設外の仕事は作業料金が高く、積極的に参加する利用者が多い。お金を貯めて施設での旅行資金に充てたいと話している」と利用者が率先して仕事に来ていることを話してくれました。

ななお・なかのと就労支援センターとして機能し始めて約1年4カ月。清掃作業や草刈りなどの依頼を受け、最近では能登かきの養殖や直売を手掛ける株式会社能登風土から、カキ殻の付着物を除去する作業などの新しい依頼も増えてきています。企業からの依頼以外に、商品の販売も実施しました。コロナ禍では事業所で作った菓子がなかなか売れず、4つの事業所の菓子を詰め合わせたものを販売。完売したことを受け、株式会社御祓川から商品化の話も出ています。

高齢者向け配食事業の参入を視野に

同センターは独自事業として、高齢者向けの配食事業への参入を計画し、弁当の試作を始めました。現在は、週に1回みのり園の利用者が50食分の弁当を作り、昼食として食べています。「障害のある人が高齢者を支えるモデルになれば。障害のある人がいないと成り立たない七尾市・中能登町を目指したい」と力を込める木谷さん。瀧川さんは「障害のある人が、働いたお金だけで自立した生活が送れるように支援したい」と温かいまなざしで話しました。


雇用主の声

当ホテルの清掃作業は範囲が広く、人手不足で困っていたところ、障害がある人と企業を結び付ける取り組みがあると聞いて、賛同しました。

昨年から清掃の仕事をお願いしていますが、丁寧でとても助かっています。初めは週3回でしたが、今では週6回お願いしています。施設の職員も同行してくれるので、コミュニケーションに困ることはありません。従業員の中でも「障害のある人でもできることはたくさんある」と理解が深まっています。今後は掃除だけでなく、アメニティの設置なども協力をお願いできたらと思っています。

ホテル海望
総務部長
宮田(みやた)清孝(きよたか)さん


仕事を依頼したい人はこちらへ
一般社団法人

ななお・なかのと就労支援センター

代表理事

瀧川(たきかわ)嘉明(よしあき)

本部:七尾市万行町5部129番地18(ピットイン内)

電話番号52-3100

Fax番号53-7505

メールアドレスnanaonakanotocenter@gmail.com

8ぺーじ

エール01

さいこうえん障害者就業・生活支援センター

障害がある人のやりがいづくりを私たちも応援します!

障害と、就職のこと悩んでいませんか?

障害のある人にとって、一般企業で働くことは、社会参加への第一歩となります。「働きたいけど、どうしたらいいのか分からない」など、仕事に関する悩みを聞き、サポートしてくれる場所があることを知っていますか?

さいこうえん障害者就業・生活支援センターは、一般企業などで働くことを希望する人の就労支援を行っています。仕事探しや職場に慣れるための実習への同行、就職後の定期訪問など、地域で安心して働き続けるサポートをしています。また、障害者雇用を受け入れている企業や、これから障害者雇用を考えている企業への支援も行っています。

障害があっても働きたいあなたの悩みをご相談ください

  • 働いたことがない、長いブランクがある
  • 働きたいけど、何から始めたらいいか分からない
  • 仕事が長続きしない

さいこうえん障害者就業・生活支援センター

七尾市袖ケ江町14-1

電話番号52-0517

Fax番号52-0515

メールアドレスsien-center@tokujyu.jp

インターネットでさいこうえん障害者就業で検索

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理解者がいる心強さ

さいこうえん障害者就業・生活支援センターの支援を受け、令和2年4月からのとじま悠々ホームに勤めているAさん。障害があり、人と話すことはできませんが、真面目な性格で絵を描くことが好きです。施設では、ベッドメイキングの仕事を任され、施設職員との意思疎通は相づちや筆談でやりとりしています。

「仕事を覚えるのが早く、手を抜かずきちんとしてくれて助かります」と施設の担当者。「絵が好きなAさんに、業務日誌に絵を描くことを提案すると、毎日描いてくれます」と日誌を見せてくれました。日誌には、困ったことがないか確認する欄が設けられ、話ができなくても思っていることを伝えられる工夫がありました。その日の仕事内容や、花や鳥のイラストが添えられた感想が書いてあり、最後は「明日も頑張ります」と前向きな言葉で締めくくられていました。

仕事でうれしいと思う瞬間は「シーツがきれいになったときです」とAさん。仕事で不安なことはないかと尋ねると「困ったときは、職員の人が助けてくれるので大丈夫です」と力強い文字で答えてくれました。施設職員に助けてもらいながら、ひたむきに仕事に取り組む姿がありました。

Aさんの初日の感想

今日は初日で少し緊張しました。カバーに掛け布団を入れるのを苦戦したところ中西さんが優しく丁寧に教えて下さり、勉強になりました。これから社会人として話すことはできなくても笑顔で頭を下げてあいさつできるよう頑張っていきたいと思います。

雇用主の声

のとじま悠々ホーム

施設長

加藤(かとう)順二(じゅんじ)さん

福祉施設として、障害がある人も働ける環境づくりが大切だと思い、当法人では障害者雇用に積極的に取り組んでいます。

Aさんには、ベッドメイキングや掃除をお願いしていますが、真面目な性格できれいな仕事をしてくれるので、安心して仕事を任せています。職員とコミュニケーションが取りやすいようにと業務日誌を付けてもらい、伝えたい事を書いてもらう工夫をしています。さいこうえん障害者就業・生活支援センターの皆さんもサポートしてくれるので、心強いです。Aさんの姿を励みに、障害があっても「私も一般企業で働いてみよう」という人が増えてくれるといいなと思います。

さいこうえん障害者就業・生活支援センター

センター長

前田(まえだ)奈津子(なつこ)

障害のある人にも得意・不得意があり、手先が器用な人も、決められた作業をこつこつと続けることが得意な人もいます。実際に雇用している企業からは「長時間、集中力を切らすことなく黙々と作業する姿に驚いた」などと感想をいただくこともあります。まずは、障害の特性などを理解していただき、良い所を伸ばせるような作業内容を一緒に考えたいと思います。

私たちは「働くこと」に関するさまざまな相談を受け、障害のある人と企業とのかけ橋になりたいと思っています。障害のある人が、自立し、地域で安心して暮らせるように応援します。

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障害福祉サービス事業所

一人一人に合ったペースで働く「福祉的就労」

市内の障害福祉サービス事業所では、企業から委託された軽作業の他、野菜作りや菓子の製造など、自分に合ったペースでさまざまな作業に取り組んでいます。

県内唯一の納豆作り

みのり園

県内の事業所で唯一、納豆作りに取り組むみのり園。「デカ山納豆」や「チョンコ山納豆」など、地元スーパーなどに並ぶ商品の他に、旅館や学校給食向けの商品も作っています。納豆は3日間かけて作られ、蒸し上がった大豆をパックへ詰める作業などを4人の利用者が担当しています。他にも、ポン菓子や漬物、こんにゃくなど自主製品に力を入れています。

「ポン菓子を袋に詰める作業が好き」と話す、利用者の山口真理さん。施設での旅行資金に充てようと、施設外の仕事にも積極的に参加しています。「みのり園で仕事ができて楽しい。早くみんなで旅行したい」と目標を持ちながら仕事に取り組んでいました。

クリーニングと農業を仕事に

青山彩光苑ワークセンター田鶴浜

クリーニング事業に取り組むため、平成26年に増設された「配送センター」。病院や高齢者施設の利用者の衣類などをクリーニングしています。8人で1日あたり約千枚の衣類やタオルを洗濯してたたみ、仕分ける作業を行っています。大量にある洗濯物の中で個人のものが分からなくならないように、名前が書かれたネットや棚に入れるなどの工夫をしながら、黙々と作業に取り組んでいました。

吉田町にある10棟のハウスでは、季節の野菜や花を栽培し、地元を中心に関西方面にも出荷するなど販路を広げています。野菜は飲食店や旅館、学校給食でも使用され、スーパーや能登わかば農業協同組合などで販売されています。

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障害への理解をお店から広めたい

ぱいんの家

障害のある人でも仕事ができることを身近に感じてもらおうと、平成27年4月に袖ケ江町に開店した洋菓子カフェ「ナノパイン」。現在はミナ.クル1階に移転し、店名を「coffee&cakeぱいんの家」と改めました。販売するケーキの調理には利用者5人が携わり、材料の計量や器具の洗浄など、指導員が効率よく作業できるよう手助けしています。パティシエの経験がある指導員の岡島(おかじま)保(たもつ)さんは「ケーキ作りは華やかに見えるけど、実は細かな作業ばかり。それでもみんな根気があって助かる」と目を細めます。ケーキに使われる野菜は、耕作放棄地を利用した「ぱいんファーム」で丹精込めて育てられています。平成30年から稲作も始め、9月に収穫した新米の「ぱいん米」は店頭や近隣のスーパーなどで販売されています。

地域と融和する

障がい福祉サービス事業所

ゆうの丘

令和2年1月に矢田町から町屋町に移転したゆうの丘。住民とコミュニケーションを図りたいと、月に1回、一緒に清掃活動に取り組むなど、すっかり高階地区になじんでいる様子。施設長の本田(ほんだ)雄志(たけし)さんは「人手がいる作業を手伝ってもらったり、地域のイベントに参加させてもらったり感謝している」と喜びを口にします。

自主製品のクッキーは、七尾産の米粉や珠洲の塩を使うなど材料にこだわり、市のふるさと納税の返礼品にもなっています。利用者が一つ一つ心を込めて作り「クッキーが売れるとうれしい」と笑顔を見せます。定期的に注文をもらう場所には、期間限定の商品を取り入れるなど飽きられない工夫も。他にも原木シイタケの栽培や、電線を束ねるハーネスの組み立てなど、一人一人に合った作業に取り組んでいます。

全国でも例を見ない、水産業との連携

Support for job

えもる

令和元年11月に川原町に開所したえもる。中島町で能登かきを養殖する有限会社山口水産と連携し、カキの種つなぎの作業や殻の付着物を取り除く作業をしています。事業所と水産業の連携は全国でも珍しいことです。山口水産の山口(やまぐち)翔太(しょうた)さんは「以前は高齢の人にお願いしていたが、体調を理由に辞めてしまう人も。5年後、10年後を見据えると若い働き手が必要」と話します。山口水産の社員と肩を並べて作業する利用者の姿は頼もしいものでした。

自主製品はエコバッグやマスク、能登名産のころ柿、廃業した老舗漬物会社から譲り受けたレシピを元に作った「万能深味醤油」など、他にはない製品で目を引いています。

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エール03

石川県立七尾特別支援学校

「働きたい」を育みきらり輝く人材に

七尾特別支援学校は、特別な支援を必要とする児童・生徒のための学校です。小学部、中学部、高等部があり、高等部の3年間は、進路を考え、社会で生きるための力を育てます。企業や事業所で仕事を体験したり、作業学習などをしたりして、就労意欲の向上や、社会参加、自立を目指します。

高等部では、週に2回5時間ずつ授業を使って作業学習に取り組みます。農工、木工、工芸、委託作業、清掃美化、クリエイティブの6つの班があり、どの作業に取り組むかを生徒自身で選択します。どの班も「きれいな製品を作る」など、一人一人がその日の目標を掲げて作業に取り組んでいます。

作業学習で作る製品は、自分が作りたい作品を作るのではありません。決められた製品を作り、地域のイベントなどで販売します。黒板には作った製品の数と売れた数がひと目で分かるよう貼り出され、生徒たちは製品が売れることで「働く喜び」を感じています。また、職場実習などで働く現場を体験することも大切にしています。

 

写真説明

(1)陶器を製作した工芸班

 

(2)椅子の製作に取り組む木工班

(3)SWS西日本(株)からの作業に取り組む委託作業班

(4)エコバッグを作るクリエイティブ班


高等部主事

戸谷(とたに)茂(しげる)さん

作業学習では技術を習得するだけではなく、協力することや達成感、「自分が役に立っている」という喜びを感じてもらいたいと思います。作った製品が売れることなど、成功経験をたくさん積んで働く意欲をつけてもらいたいです。進路相談では「長く続けられる仕事」を本人や保護者と一緒に探します。学校は、生涯サポートをしていくつもりなので、何年たっても困ったことがあれば相談に乗りたいと思います。

高等部3年

田畑(たばた)美由希(みゆき)さん

作業学習で一番好きなのは、小物などを作るクリエイティブ班の作業です。自分が細かい作業が好きだと知ることができました。イベントで自分達が作った物が売れると、とてもうれしいです。職場実習では、介護施設で食事の配膳や、手の消毒の手伝い、レクリエーションを一緒にしました。その時に「ありがとう」と言われたことがうれしかったので、人の役に立つ仕事がしたいなと思っています。

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「働く」かたちは、ひとつじゃない。

障害がある人の働くかたちはさまざまです。

できる仕事をお願いすることや作った製品を購入することも障害のある人が働くことへの応援につながります。

まずは障害がある人のことを知ってください。

そして誰もが輝ける地域に。

お問い合わせ

所属課室:企画振興部広報広聴課

〒926-8611石川県七尾市袖ケ江町イ部25番地

電話番号:0767-53-8423

ファクス番号:0767-52-0374

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