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5月31日、6月1日の2日間、東京2020オリンピック聖火の点火セレモニーが石川県で行われました。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、公道での聖火リレーを中止。ランナーの関係者以外は無観客で、トーチの先を近づけて聖火をつなぐ「トーチキス」形式で実施しました。2日目は和倉温泉湯っ足りパークで、宝達志水町以北の市町を走る予定だった79人のランナーがステージに2人ずつ登壇して聖火をつなぎ、思い思いのポーズを決めて喜びを表現しました。
七尾市とゆかりが深い俳優の若村麻由美(わかむらまゆみ)さんが最終ランナーを務め、聖火皿に聖火をともし「コロナとの闘いは続きますが、人間の知恵と努力で克服できると聖火を見て感じました」と語り「どんなことがあっても負けないという強い心を次の人につないでほしい」と次の富山県へ聖火を託しました。
(写真説明)
1.フォトスポットで記念撮影
2.各市町の聖火ランナー
3.撮影しながら応援する家族
4.最終ランナーを務めた若村麻由美さん
5.カメラに向かってポーズを決める
6.トーチキスの瞬間
7.ポーズの練習
七尾市から参加した聖火ランナーの皆さん
竹田徹(たけだとおる)さん
山口宗大(やまぐちむねひろ)さん
加賀淳一(かがじゅんいち)さん
奥村博行(おくむらひろゆき)さん
辻孝夫(つじたかお)さん
大森重宜(おおもりしげのり)さん
小田與之彦(おだよしひこ)さん
長谷川明子(はせがわあきこ)さん
多田健太郎(ただけんたろう)さん
全国を走る東京2020オリンピック聖火リレーで石川県の最終ランナーを務めた俳優の若村麻由美さん。無名塾出身で、能登演劇堂のこけら落とし公演「ソルネス」やロングラン公演「マクベス」に出演するなど、七尾市と深い縁があります。そんな若村さんに七尾市での思い出や、演劇への思いを伺いました。
私は、高校卒業後に無名塾に入りました。ちょうどその年から無名塾の中島町での合宿が始まり、当時は民家に宿泊していたので、夏休みに親戚の家に行くような感覚でした。
合宿中は、芝居の稽古だけでなく、町内の夏祭りに参加して太鼓を教わったり、一緒に宴会したりと、地元の人たちには大変良くしていただきました。
19歳で初舞台が決まった時も、20歳でNHK連続テレビ小説「はっさい先生」の主演が決まった時も、地元の人たちが自分のことのように喜んでくださったことは忘れられません。私にとって能登は心のふるさとであり、演劇のふるさとです。
合宿を初めてから10年後、演劇専用の劇場、能登演劇堂が完成しました。舞台奥の大扉が開く仕掛けは国内でも類を見ないものです。仲代達矢さんの奥様・宮崎恭子(やすこ)さんは、この仕掛けを活かし、「シェイクスピアの名作『マクベス』の一場面である森が動く演出をいつか実現したい」とずっと思い描いていました。
その願いは平成21年、能登半島地震の風評被害を払拭するための能登限定公演として実現しました。
残念ながら宮崎さんは平成8年に亡くなりましたが、生前、「マクベス夫人役は麻由美にやらせたい」と言い残したことを仲代さんから聞かされた時は、身に余る思いでした。能登演劇堂でマクベスを上演することは仲代さんの悲願でもあり、私にとっても特別なことでした。
地方公演では例がない3カ月間で50公演。周りから「大丈夫なの」と心配されましたが、稽古している段階でチケットが売り切れてしまい驚きました。
もちろん、森が動くシーンも大好評でした。舞台奥の大扉が開くと、スコットランドの森が再現され、そこに本物の馬を走らせたり、数十人のエキストラが兵士役で出演したりと創大な演出で、「見たことがない」と絶賛されました。10年以上経った今でも「また見たい」と言われます。そんな作品をこれからも作り続けていきたいです。
世界から注目されるフランスの若手劇作家フロリアン・ゼレールが描いた「LeFils(ルフィス)息子」を9月26日に、能登演劇堂で上演します。「LeFils息子」は、フランス最高位の演劇賞であるモリエール賞で最優秀新人賞を受賞した話題作です。思春期の絶望や不安を抱える息子と家族の物語で、私は実母役で出演します。現代の家族が抱える問題に誠実に向き合う姿が描かれ、見た人の心に訴えかける作品になっています。
この作品はフロリアン・ゼレールの家族三部作の一つで、前作の「LePere(ルペール)父」の舞台にも娘役で出演させていただきました。その時の演出も素晴らしく、「またご一緒したい」と思っていたので、今作も参加できて光栄です。きっと今作も話題になると思います。楽しみにしていてください。
今回、石川県の皆さんの思いが詰まった聖火を最後につなぐ重役を務めさせていただきました。七尾市と36年の交流があってこそだと実感し、あらためて「能登は私の大切な場所」と感じました。私にできることは、七尾市に灯った演劇の火をつないでいくこと。そして演劇の力で恩返しすること。
私にとって演劇は決して欠かせないものであり、心の糧です。閉塞感がある今だからこそ、今日を生きる、明日を生きる力になるような演劇を、皆さんに届けたいと思います。
「LeFils息子」公演情報
日時:9月26日(日曜日)午後1時30分開演、午後6時30分開演
出演:岡本圭人(おかもとけい)、若村麻由美、岡本健一(おかもとけんいち)ほか
前売料金(税込み):一般8,500円、高校生以下4,500円(全席指定)
※当日券は500円増し
※未就学児入場不可
予約:一般予約開始日7月8日(木曜日)から
問い合わせ
能登演劇堂
電話番号66-2323