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更新日:2016年12月26日

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どうする、その空き家-空き家と移住とまちづくり-

人口減少や高齢化などで全国的に空き家の増加が問題となっています。

七尾市でも町を少し歩くと「空き家が多いな」と感じることはありませんか。全国で7〜8軒、七尾市では5〜6軒に1軒が空き家の状態です。すぐに居住できるものから、荒れ果てて倒壊の危険があるものまで、さまざまです。今後も増え続けると予想される「空き家」はどうすれば良いのでしょうか。

(出典:平成25年住宅・土地統計調査)

空き家を必要としている移住希望者

近年、都会から地方へ移住したいという人が増えています。この好機に、人口減少に歯止めをかけようと七尾市は移住定住の促進に取り組み、移住者は年々増加しています。

豊かな自然の中で暮らしたい、ゆっくり子育てがしたい、農業を始め起業したいなど、移住する目的は人によってさまざまです。多くの移住者の悩みは「仕事」と「住まい」。特に「住まい」は働く世代から退職後の世代まで多くの人が直面する悩みです。

夢の田舎暮らしを始めるために、古民家を探しているという問い合わせが多く寄せられますが、提供できる空き家が足りていません。年々空き家は増えているのに、移住者を受け入れるための空き家が不足しているのです。この問題を解決できれば空き家も減り、移住者が増える。まさに「一石二鳥」ではないでしょうか。

「空き家バンク」で空き家情報を発信

きちんと管理されない空き家は徐々に傷みが進み、崩れ、倒壊、害獣・害虫の温床になるなど、周辺住民に不安を与え、生活環境に悪影響を及ぼす恐れがあります。

そうなる前に、空き家になってすぐの家や、きちんと管理されて利用可能な空き家の情報を集約した「空き家バンク」という仕組みが、七尾市にあります。集約した情報はホームページに掲載し、賃貸や購入を希望する全国の人に発信しています。

空き家を売りたい、貸したいという人は、老朽化が進み価値がなくなる前に登録(無料)してみませんか。

空き家バンクの状況

これまでに成約した空き家45件

賃貸20件、売却25件

登録中の空き家35件

賃貸8件、売却27件

(11月30日現在)

お問い合わせ

ふるさと振興課

電話番号53-1134

放置されたままの空き家はどうなるの

平成27年5月に施行された空家等対策の推進に関する特別措置法。所有者にはこれまで以上に空き家の適正な管理が求められています。

市には空き家を調査する新たな権限が与えられました。調査の結果、特に対策が必要な「特定空き家等」に認定されると、所有者には次のことが要求されます。

修繕や解体

固定資産税の特例対象からの除外(住宅などが建っている土地は更地と比べて、固定資産税が最大で6分の1に減額されています。この特例が受けられなくなります。)

危険な空き家の解体費用を助成します

助成額

解体費の2分の1

上限

木造50万円

木造以外100万円

助成を受けるには市から老朽空き家の認定を受ける必要があります。まずはお問い合わせください。

お問い合わせ

都市建築課

電話番号53-8429

専門家から見た空き家の現状と活用策

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七尾市空き家バンク登録事業者代表

株式会社不動産イサオ

代表取締役

瀬口功雄さん

動き出した空き家の所有者

「固定資産税の納税通知書に同封されている空き家バンクの案内を見て相談に来るお客さんも増えてきました」と空き家バンクが認知され、これまで中古物件市場に出てこなかった物件の相談が増え、空き家の掘り起しにつながっています。

売りに出す前にまずは賃貸に出すのも手

片道何時間もかけて数カ月に一度空き家を訪れ、室内に風を通し、庭木の手入れをするなど、空き家の管理には手間と時間がかかり、高齢化とともに負担になる人が多くいます。

「空き家を賃貸にするメリットは家賃収入だけじゃないんです。人が暮らす家は自然と風が通り、手入れされ、空き家の状態より老朽化が遅れます。苦労していた手入れがいらなくなり、助かったという声をよく聞きます。また、強風や積雪で近隣に迷惑をかけないかと心配することもなくなるなど、空き家を賃貸する効果は思いのほか大きい」と話す瀬口さん。

いきなり売却するのはハードルが高いという人は、まずは賃貸から始めてみるのも良さそうです。

実際「貸してもらえる空き家はないか」との問い合わせが圧倒的に多いです。

空き家は「大切な財産」上手に活用してほしい

「田舎独特の感覚だと思いますが、家を賃貸や売買に出すと、あの家は貧乏なんじゃないかと周囲に見られることを気にし過ぎているような気がします」と話す瀬口さん。

所有者や市民の皆さんへのアドバイスとして「お金を運用・投資するのと同じで、空き家も大切な『財産』。うまく活用しようとすることは決して悪いことではありません。周りの目を気にし過ぎることなく、お金と手間をかけて財産をうまく活用するという意識が広まってほしい」と話してくれました。

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空き家バンクへの登録を呼びかけるチラシ(固定資産税の納税通知書に同封)

空き家を活用し、地域の活性化に取り組む

高階地区

地域づくり協議会が移住相談の窓口に

農業が中心の高階地区でまちづくりに取り組む『たかしな地区活性化協議会』(高階地区の地域づくり協議会)。近ごろ移住の相談が増えています。事務局長の山本さんはその対応に積極的で、相談者一人一人の話を聞き、時には一緒に家探しをすることも。気に入った物件があれば所有者に連絡が取れるよう自ら調整役を買って出ます。

「高階地区には約70軒の空き家があります。そのうちすぐに住める家は約10軒。空き家の場所や水回りの傷み具合、リフォーム済みといった現状はつかんでいます。協議会の防犯部会が防犯対策で地区の全戸調査をした結果が空き家の活用に役立っています。約1年半の間に6家族の移住が決まり、正直驚いています」と山本さん。

また、移住者が地域に溶け込めるよう、町会長へのあいさつや行事の積極的な参加を呼び掛けます。町会長をはじめ町の人も温かく迎え入れ「住民とのトラブルはなく、うまくいっています」と移住者を受け入れる土壌があることに胸を張ります。

「人口が減っていく地域を守り続けるためには住む人を増やすことが一つの対策で、大切な部分。これからも相談があれば応えていきたい」と定住促進のモデル地区を目指す意気込みが感じられました。

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たかしな地区活性化協議会事務局長

山本 進さん

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移り住んだ人

中丸 一彦さん、眞理子さん夫妻(ニューヨークから池崎町に移住)

移住を決めた理由

「ここの景色を見た時、子どもの頃に見た原風景を懐かしく思い出したんです」と話す眞理子さん。高階地区にゆかりがなかった二人ですが、すぐにこの地を気に入り、わずか2回目の訪問で移住を決断。「都会の人の価値観は『金銭』。満足することがなくきりがない。退職後の生活を考えた時、自然の中に身を置く人間本来の生き方を選びました」と移住の理由を教えてくれました。

「ここは宝の山、本当に毎日飽きません。朝起きてブラインドを開けるのが楽しみ」と移り変わる四季を感じて暮らす二人。日課の散歩で季節の草花に触れ、目や耳、鼻など全身で自然を楽しんでいます。住み続ける人には当たり前のことが、都会で長く暮らした人にとって何よりの幸福になっています。

池崎町は大きな家族

「子どもは町のみんなの子ども。お年寄りをみんなで見守っているのがすてき。初めて会う人もきさくに話しかけてくれます」と一彦さん。池崎町で暮らして大変なことを尋ねると「住んですぐの頃、朝6時半に呼び鈴が鳴って、近所の人が野菜を持ってきてくれたときは時間の感覚が違うことにびっくりしましたね。でもそれがわかれば苦労を感じることはないし、皆さんとても親切です」と、移住者が直面する「近所付き合い」の悩みは、二人の人柄と地域の温かい受け入れ体制で解決されています。

命を吹き込まれた空き家

二人が住む家は、市の空き家バンクに登録されていた物件を購入し、リフォームしたもの。立派なはりや引き戸などを残しながら、趣のあるモダンな雰囲気のある家に仕上がりました。

近所に住む元所有者がよく家に遊びに来るそうで「かつて自分が住んでいた愛着のある家が、姿は少し変わっても、昔の面影を残したまま使われていることを喜んでいただいています」と微笑ましいエピソードを教えてくれました。

空き家と移住とまちづくり

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移り住んだ人

森本 憲三さん

(神奈川県から盤若野町に移住)

七尾に移住を決めた運命の家との出会い

以前はオーストラリアで幼稚園を経営していた森本さん。帰国するときにどこか日本海側の田舎で魚がおいしい所に移住したいと思い、富山県から島根県までくまなく訪れたそうです。「良い地域はありました。でもこれという家に出会えなくて。貸してもらえなかったこともありました。やっとこの家に巡り合ったのです」。移住する森本さんにとって一番大事な住まいの問題が解決し、一気に移住への道が開けました。

町の人との付き合い

「盤若野町に移住してきたとき、家の所有者さんが一緒に近所を回ってくれて『こういう人が住むことになった、頼む』と言って紹介してくれたのが大きかった」と、盤若野町にスッとなじめた秘訣を明かしてくれました。

町の人たちは、「こんな年寄りばかりの田舎に人が来てくれるなんて」と歓迎したそうです。「この町では私も若手なんです。田舎に住んだら地域の行事には参加していかないと」と話す森本さん。草刈りや祭り、慰労会などにも積極的に参加して町に溶け込む努力も欠かしませんでした。

地域の顔となる人との出会い

海外生活や喫茶店の経営などの経験がある森本さんは、今あるものでできることを考え、ゲストハウス(簡易宿泊所)を開くことを決意。現在はオープンに向けて準備が進んでいます。「今の家でゲストハウスをやろうと考えていたときに、たかしな地区活性化協議会の山本進さんがぴったりの物件があると紹介してくれたのが温井町の空き家。管理している近所の人に頼んで中を見せてもらうと、台所の改修だけで開業できるパーフェクトな物件でした。この家に出会えたのは山本さんのおかげ。『地域の顔』の山本さんの紹介だから所有者も安心して貸してくれたと思います。誰だって素性の知れない人に家を貸すのはためらいますから。私は山本さんに人柄を認められスムーズに事が運んだのかもしれませんね。」

ゲストハウスをオープンする温井町には、集会所がなく、町会長の家を集会所にしています。森本さんは「温井町に行くと決めた時から、ゲストハウスを町の人が集まる場所としても使ってもらおうと決めています」とこれから始まる温井町との交わりを楽しみにしています。また、ゲストハウスだけでなく喫茶店の併設も計画中で「地元で作る菜の花米や野菜を使った料理を出したいですね。自分だけでなく地域が潤うような循環ができれば」と視線の先には地域の未来が映っています。

移住者を迎え入れる地域の受け皿づくりに期待

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一般社団法人能登定住・交流機構

事務局長

太田 殖之さん

能登地域への移住・定住を希望する人に仕事や先輩移住者を紹介するなど、移住をサポートする太田さん。「高階地区に移住者が続けて入ってきている勢いをつなげていけるような取り組みを考えています」と、移住した森本さんが始めるゲストハウスを中心に、移住希望者が農業体験をしたり、地域の人たちと一緒に仕事をつくったりできないかと構想を練っています。

移住希望者が現地見学に来る時「インターネットで公開していない空き家でも、知り合いの紹介なら貸しても良いというケースが結構あります。そういった情報は地区で把握していることが多いので、町の人が空き家を一緒に見て回れると良いですね」と話しました。「都会には田舎に住みたい人が大勢います。『うちに来てくれれば大丈夫』と言ってくれる人がいる地域には、より多くの人が移住してくると思います」と地域の受け皿づくりの広がりに期待します。

移住定住の対策はすぐに成果が表れるものではありません。今回取り上げた住まいの問題だけでなく、移住後の働き先、教育環境、公共交通など、移住者を受け入れる環境づくりには多くの課題があることも事実です。

移住者の住まいの問題を解決する鍵を握る「空き家」。防災や地域福祉などの観点から地域では空き家の実態を把握している場合が多いのではないでしょうか。その情報を求めている移住者は少なくありません。

少子高齢化でますます空き家が増加し、老朽化が進むことで、防災・防犯の問題につながります。そんな地域の将来は誰も望んでいないはず。高階地区の取り組みのように、まずは自分たちができることとして、空き家を負の財産にせず、活用する方法を考え取り組んでみませんか。

移住者を迎え入れると、自分たちが大切に守ってきた地域を壊されてしまうのではないかという気持ちがあるかもしれません。

しかし、高階地区ではそのようなことは起きていません。生まれ育った環境や考え方が違う移住者も、古くからの風習を理解した上で共にコミュニティを支える存在になりつつあるのも事実です。空き家対策が地域づくりの好事例になっています。

空き家をきっかけに、移住者という新たな風を迎え入れながら地域の未来を話し合ってみてはいかがでしょうか。

お問い合わせ

所属課室:企画振興部広報広聴課

〒926-8611石川県七尾市袖ケ江町イ部25番地

電話番号:0767-53-8423

ファクス番号:0767-52-0374

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