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4月23日は「子ども読書の日」です。子どもの読書活動への関心と理解を深めるとともに、子どもが積極的に読書活動を行う意欲を高めることを目的に定められています。
4月から5月にかけては「こどもの読書週間(4月23日~5月12日)」や「石川県子ども読書月間(4月23日~5月22日)」など、子どもの読書に関する記念日や関連イベントが多くあります。この機会に、子どもの読書について考えてみませんか。
子どもたちがより豊かな人生を送ることを願い、読書に親しむ機会の充実と環境の整備を図ることを目的に策定。子どもの成長に関わる全ての機関や団体が連携し、子どもと読書をつなぐ活動ができるよう、それぞれの役割と取り組む基本方針を示しています。
(1)子どもの成長にあった読書活動の推進
発達段階に応じた本と親しむ機会をつくることで良い読書習慣が身に付くと考えられるため、年代別に子どもの読書活動を推進します。
乳幼児
どの絵本を読んだらいいか迷っている保護者へ、おすすめの絵本や図書館の情報を発信します。
小中学生
子ども同士がおすすめの本を紹介できる機会をつくります。同世代の子どもが読んでいる本を知ることで、読書の幅が広がります。
中高生
子ども自身が同世代に読書の情報を発信する活動を進めます。書評合戦(ビブリオバトル)のように、おすすめの本を紹介し合い、一番読みたくなった本を決定する、ゲーム性のある活動などを実施します。
障害のある子ども
点字絵本や布の絵本などのバリアフリー絵本(障害の有無にかかわらず楽しめる絵本)を充実させます。
(2)本を読む意味・大切さを伝える啓発活動
子どもは、読書する大人の姿を見ることで読書意欲が高まるため、子どもにとって身近な大人に、読書活動の意義への理解を深めるよう普及啓発活動に努めます。
各保護者会(七尾市PTA連合会など)を対象とした講座や講演会を実施。
(3)子どもを取り巻く読書環境の整備
乳幼児期から本に親しむことができる環境づくりを推進します。また、電子メディアの普及や新しい生活様式などによる、子どもを取り巻く読書環境の変化を調査・分析し、新しい読書環境を整備します。
ケーブルテレビやスマートフォン(動画配信サービスなど)を活用した番組を作成し、絵本コーナーの広報・宣伝方法として会員制交流サイト(SNS)の活用を検討。
(4)子どもの読書をみんなで考えるネットワークづくり
子どもと読書をつなぐボランティアの養成と拡充のため、養成講座や交流会を開催するなど、各機関や団体が一体となって取り組み、情報を共有しながら協力体制を確立します。
皆さんは、普段から本を読んでいますか。子どもの頃から読書に親しむことには、さまざまな効果があるといわれています。
しかし、これらの効果に関係なく、本が好きな子どもに本を読む理由を聞くと「面白いから!」「楽しいから!」と返ってきます。子どもは何より本を読むことが楽しく、好きなのです。たった1冊の本から、子どもが読書好きになることもあります。
令和元年度に、市内の小学3年生、5年生、中学2年生を対象に行ったアンケート調査によると、令和元年11月の1カ月間で1冊も本を読まなかった児童・生徒の割合が、平成27年度から増加していました。また、小学生から中学生になるにつれて、読書をしなくなる傾向があることも分かりました。
認定こども園・保育園の年長児を持つ保護者に対して行ったアンケート調査では、読書が好きな保護者の割合が減少傾向にあることも分かっています。
読書が好きな保護者の割合(認定こども園・保育園の年長児を持つ保護者)
平成23年
好き27%、どちらかというと好き48.5%、どちらかというと嫌い22.4%、嫌い2.0%
平成27年
好き22.6%、どちらかというと好き46.1%、どちらかというと嫌い28.7%、嫌い2.6%
令和元年
好き17.9%、どちらかというと好き47.2%、どちらかというと嫌い32.1%、嫌い2.8%
数値は四捨五入しているため、総数とその内訳の合計は、必ずしも一致しません。
市内の各小中学校では、子どもと読書をつなぐ活動を行っています。子どもが読書や「おはなし」に触れる機会をつくろうと、一時間目の授業が始まる前に読書をする「朝読書」や、保護者や地域のボランティアによる読み聞かせなど、さまざまな活動に取り組んでいます。
天神山小学校は、平成27年度に子どもの読書活動優秀実践校文部科学大臣表彰を、平成28年度には高橋松之助(たかはしまつのすけ)記念「朝の読書大賞」を受賞するなど、子どもが読書活動に対する意識を高める取り組みが全国で評価されました。同校では、学校全体の年間読書目標冊数を決め、毎日の朝読書や、個人の目標冊数を達成した児童を表彰する「多読賞(たどくしょう)」、夏休みなどの期間中に家族で本の感想を書く「うちどくノート」などに、継続して取り組んでいます。今年度の目標は4万冊。2月中旬には目標を達成し、取材をした2月末時点で4万1059冊でした。コロナ禍で自由に図書室に出入りできなくなっているため、本を借りられる機会が減っているにもかかわらず、読書数は前年度よりも増えているそうです。天神山小学校の子どもたちが、積極的に読書に取り組んでいることが分かります。
「家読」は、家庭で行う読書のことで、全国的にも広がりを見せています。うちどくノートは市立図書館が、子どもの読書の機会を増やそうと作ったノート。市内の小学校で配布され、夏休みなど学校の長期休業期間中の宿題としても活用されています。
学校の図書室で借りた本だけでなく、図書館で借りた本や自宅にある本を読んでも記録することができます。本を読み終えたら、その本の題名や作者、感想を記入し、お父さんやお母さんから一言を書いてもらいます。
今年度の冬休み期間中に読書した数が15冊と、校内で一番多かった天神山小学校2年生の高間(たかま)湊士(そうし)くん。冬休み以外でもほぼ毎日、本を読んでいます。お母さんの智香(ちか)さんによると、小さい頃から自宅に絵本を置くようにしていたそうです。弟や妹も湊士くんの影響を受けて「読んで」と絵本を持ってくるように。特に子どもにとって、身近な人の読書をする姿は「本が面白いもの」として映りやすいのかもしれません。
うちどくノートに取り組むときは、ただ本を読むだけでなく「どんなことが書いてあった?」「どんなふうに感じた?」と内容を聞くようにしています。うちどくノートがあることで、親子が話すきっかけになっています。子どもの考えが聞けるので、とてもいい取り組みだと思います。
中学生になると、うちどくノートから読書通帳に切り替わります。読んだ本を記録するのは同じですが、本1冊ごとに家族からの一言をもらうのではなく、読書通帳の上限20冊まで達成したときにもらいます。
七尾中学校で取り組んだ読書通帳の中から、家族からの一言を紹介します。
司書の仕事は、図書室の管理はもちろん、児童一人一人に合った本選びの手助けもします。児童との会話の中からヒントを得て、その子が好きそうな本を選んでいます。心掛けているのは、普段からいろいろな種類の本をとにかく開いてみること。知っている本が増えれば、子どもたちにお勧めできる本の幅も広がります。天神山小学校は、児童の読書量がとても多い学校です。本に興味がない子には興味を示すように、本のジャンルに偏りがある子には違うジャンルの本を読むようになど、量だけでなく読書の質を高めていくよう、助言していきたいです。
平成29年度に天神山小学校に着任したときから、読書に熱心な学校だと感じていました。休み時間には、本を入れるかばんを手に図書室へ向かう子が多く、低学年から図書室を利用する習慣が身に付いていることにとても感心しています。子どもたちには、心を育てることが一番大事です。本を読むことで実際には経験できないことを知ることができ、それに対する感情を持つこともできます。本の主人公と自分をつなぎ合わせることで、豊かな心を育て、素敵な人間に育っていくと思います。ぜひ子どもたちには、読書の世界を楽しんでほしいです。
市内の保育園や学校、施設に足を運び、おはなし会を開催しているおはなしボランティアグループ「しびびの会」。昭和59年7月に発足し、37年間活動を続けています。現在のメンバーは12人。毎週木曜日の午前中を活動日に、多忙な中、勉強会や人形劇の制作・練習などを行っています。それぞれの持ち味を生かした柔軟な活動を目指しています。
おはなし会は、手遊び、素話(語りだけで伝えるおはなし)、絵本の読み聞かせや紙芝居、人形劇で構成。0歳から高齢者まで幅広い世代を対象に、依頼されたところに出向いています。素話では、部屋を暗くして和ろうそくの灯りのもと、昔話を語ります。語り手の言葉から、聞き手は頭の中でイメージを広げます。聞き手とともに、おはなしの世界をつくり上げることを大切にしているそうです。「人形劇は人形に動きがあることで、おはなしの世界がより伝わりやすい」としびびの会のメンバー。「おはなしの展開に、子どもたちの驚いた表情や歓声を上げる姿を見れてうれしい」と目を細めます。
素話や人形劇によっておはなしに興味を持ち、楽しんでもらうことで、わくわくした心が好奇心を育み、読書活動への意欲につながります。楽しいおはなし会は、読書への入り口になっているのです。
しびびの会のメンバーは、さまざまな年齢層で構成されています。集まった際には、子育て相談や悩み相談が行われることも。異年齢交流のメリットだそうです。「子どもにとっておはなしのある環境は、感性が磨かれ、教育にもいいと感じる」と子育て世代のメンバー。「語り手も聞き手も心が豊かになるおはなし会に、あらゆる世代の皆さんに足を運んでほしい。興味のある方は一緒に活動しませんか」とメンバー一同笑顔で語りました。
しびびってどういう意味?
植物のカラスノエンドウの豆笛(まめぶえ)を「しびび笛(ぶえ)」と呼ぶそうです。笛の音色が「しびびびび~…」と鳴ることから、「音色が広がるように、お話の楽しさも伝わってほしい」という願いを込めて「しびびの会」という名前が付けられました。
市内を巡回している移動図書館車「本はともだち号」。市内保育施設や学校のほか、いくつかのコミュニティセンターを定期的に巡回しています。「図書館が近所にない」など、図書館になかなか行けない人は、ぜひ利用してみてください。
利用するときは、図書館利用者カードをお持ちください。巡回場所や日時は、図書館だよりや市立図書館ホームページでご確認ください。
ここまで読書が生み出す影響や、読書への意欲につながる取り組みを紹介してきました。大人が本に興味を持つことが、子どもの読書活動につながります。
今まで読書をあまりしてこなかった人にも「時間がない」「細かい文章を読むのが苦手」など、さまざまな理由があるでしょう。しかし「本の世界は楽しい」という感覚は、読んでみないと味わえないものです。今回の特集をきっかけに、本に触れてみませんか。
「おはなしの世界」には、生きる知恵や学びがたくさん詰まっています。コロナ禍の今だからこそ、おはなしが大好きな子どもたちはもちろん、あらゆる世代の人におはなしに触れていただき、想像力を豊かにし、日々の生活を楽しんでもらえたらと思います。
今、しびびの会では宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」の人形劇づくりに取り組んでいます。宮沢賢治の世界観をどこまで表現できるか分かりませんが、しびびの会のメンバーで頑張ります。完成を楽しみにしていてください。
近年電子メディアの普及や新しい生活様式など、社会の変化は著しく、子どもの生活環境は大きな変化を見せています。子どもにとって読書は、こうした環境の変化を乗り越え、人生をより深く生きる力を身に付ける上で欠くことのできないものです。
今回策定した「第四次七尾市子どもの読書活動推進計画」では、子どもたちが乳幼児期から発達段階に応じて本と親しむ機会を得ることができ、さらに子どもたち自身が読書の楽しさを発信できることを目指しています。地域全体で読書活動を推進していきましょう。