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更新日:2015年4月3日

2~15ページ

七尾の海と七尾の魚

七尾の里海に育まれた「定置網」

七尾の里海の恵み「いきいき七尾魚」

そして、そこに生きる漁師たち

「いきいき七尾魚」がおいしい訳

「いきいき七尾魚」が捕れる「七尾湾」と「富山湾」は、リマン海流(寒流)と対馬海流(暖流)の潮境に位置するため、

四季を通じてさまざまな魚が水揚げされます。

さらに立山連峰からミネラル豊富な地下水が流れ込むため、良質な漁場とも言われています。

このような環境から、ブリを筆頭に、脂が乗った味のよい魚を食べることができるのです。

また、漁場環境だけではありません。働く漁師たちも、素晴らしい技術を持っています。

毎朝、日が昇る前から出港し、戦国時代から伝わる「定置網」の漁法を守り、連携プレーで素早く水揚げし、私たちの食卓に新鮮な状態で届けられるよう、衛生面や鮮度管理にも徹底して取り組んでいます。

そんな恵まれた環境で魚を食べることができる私たち。

魚の需要が少なくなったと言われる中、この特集から、あらためて「いきいき七尾魚」の素晴らしさを見つめ直してみましょう。

「いきいき七尾魚」が捕れる漁場とは

七尾では古くから定置網漁業が盛んに行われており、戦国時代の末期から漁業が始まったと伝えられています。

1579年(天正7年)には、織田信長に出世魚のブリを献上した記録も残されており、定置網漁業の発祥の地の一つとされています。

3000メートル級の山々を望む富山湾は、表層部に暖流の対馬海流が流れ、深層部には低温の海洋深層水の恩恵を受け、温暖な海の魚や寒冷の海の魚が混在して水揚げされます。さらに、日本アルプスから森の栄養が豊富に流れ込み、餌となるプランクトンや小魚が豊富で良質な漁場となっています。

 「いきいき七尾魚」とは、定置網で水揚げされた魚のこと。

恵まれた七尾の里海は、四季折々に豊富な魚種が水揚げされています。

定置網という漁法

富山県境から続く七尾・能登島沿岸には、大小29もの定置網が設置されています。

主に回遊性の魚をはじめ、多種多様な魚が四季折々に水揚げされます。

近年、定置網漁法が注目を集めるようになりました。

ある漁法では、魚群を一網打尽に漁獲しているのに対し、定置網は、一部を逃がすので水産資源を守る漁法とも言われています。

そして、漁業者が主体となり、稚魚が逃げられるように網目の拡大や、種苗放流といった資源回復への取り組みも行っています。

水揚げから出荷までの鮮度管理

七尾市の沿岸部に設けられた定置網の一番の特徴は、漁港から漁場までの距離が沿岸部から1から2キロメートル程度と近いことです。

漁獲された魚は、沖で砕氷や冷海水で急速に冷やすことにより、鮮度の劣化が起きにくくなり、皆さんの食卓に届くまで、鮮度を維持することができます。

沖合いで漁獲し、すぐに漁船の魚槽に引き上げ、殺菌処理を行った滅菌冷海水やマイナス2度の海水で作ったシャーベット氷を使用しています。

これにより、海水の濃度を低下させることなく、魚の鮮度保持ができます。

「いきいき七尾魚」は、こうした衛生面や鮮度管理の徹底により出荷されているため、市場や消費者から高い評価を得ています。

こういった管理を維持徹底するため、20項目以上の「衛生管理マニュアル」を作成しています。

素早く沖締め、きちんと鮮度管理を実践し、能登・七尾の海から、全国へ「新鮮で・美味しく・安心な鮮魚」を届けるため、日々取り組んでいます。

写真キャプション(上から)

上空から撮影した定置網

滅菌冷海水施設

海水シャーベット氷施設

鹿渡島定置網密着取材「いきいき七尾魚」が食卓に届くまで

鹿渡島漁港出港

午前3時00分

鹿渡島漁港

午前2時半、漁師が続々と出勤し、出港準備が始まります。

準備が終われば、いよいよ出港です!

まっ暗な海上を漁場へ向けて進みます。

網揚げその1

午前3時20分

鹿渡島沖

出港から約15分。漁場に到着し、魚を水揚げする前段階の作業、網揚げが始まりました!

設置してある定置網を手繰り寄せ、船の反対側へ流します。

水揚げその1

午前3時45分

鹿渡島沖

網揚げが終わった後は、いよいよ魚の水揚げの開始です。

少しずつ網を手繰り寄せていくと、海面には銀色の魚影が!

巨大なタモで魚をすくい船のデッキへ上げます。

網揚げその2

午前4時30分

鹿渡島沖

二つ目の漁場に到着!一つ目と同様、網揚げが始まりました。

網揚げは、船員全員で行う作業です。

声や手で指示を送りながら、息を合わせた作業が続きます!

水揚げその2

午前4時50分

鹿渡島沖

二つ目の漁場の水揚げです。海から引き揚げる巨大なタモは、クレーンを使って操縦します。

タモの中には、タラやイワシなどたくさんの種類の魚が、混じって入っています。

かごの中には!

午前5時15分

鹿渡島沖

大きな魚や珍しい魚はかごへ、それ以外は船底のイケスに移します。

かごの中には、大きなタラが!隣には、ホウボウもいました。

選別作業開始

午前6時10分

鹿渡島漁港

漁を終え帰港。ここからは、スピード勝負!すぐに、選別作業が行われます!

魚の種類や大きさごとに、別々の箱に分けて分類していきます。

鮮度を保つ神経締め

午前6時30分

鹿渡島漁港

選別作業と同時進行で行われているのが「神経締め」。

魚の神経を壊すことで、鮮度を長く保つ技法です。

より新鮮な魚を提供するための、漁師の努力がありました!

市場へ出荷

午前6時50分

鹿渡島漁港

選別作業が終わり、種類や大きさごとに分けられた箱がトラックへ積み込まれ、出荷準備が完了。

七尾市公設地方卸売市場へ出発です!

漁師編へ!

いきいき七尾魚編へ!

特集七尾の里海に育まれた「定置網」「いきいき七尾魚」そして、そこに生きる漁師たち

漁師編

清掃作業

午前7時00分

鹿渡島漁港

出荷後の港では、漁師が、選別した箱の後片付けや船の清掃に取り掛かっています。

まだまだ続く作業に、休まず働き続けています。

県外からの注文対応

午前7時20分

鹿渡島定置

片付けのほか、東京都や神奈川県からの個別注文に対応する漁師も。

魚を捕るばかりではなく、こういった細かな仕事も行っています。

朝食作り

午前7時40分

鹿渡島定置

片付けがひと段落すると、朝食作り。

水揚げされた魚を中心に、若手漁師が作ります。

最近、他の定置網の漁師は、弁当で済ませるところが多い中、

鹿渡島定置では「同じ釜の飯を食べる」関係作りにこだわり、今でも続けています。

みんなで朝食

午前8時20分

鹿渡島定置

働き始めて6時間が経過。ようやく一息できる朝食の時間。

みんなで朝食を食べます。食べながら、今日水揚げした魚の売り上げが発表されます。

インターネットで直営販売

午前9時40分

鹿渡島定置

朝食が終わると、それぞれの作業を始めます。

その一つが、インターネットを使った直営販売です。

関東や関西を中心に、多い時には1日15件くらいの注文があるそうです。

網を修理

午前10時30分

鹿渡島定置

屋外で網を修理する漁師たち。

「地道な作業ですが、なくてはならない仕事です。漁の次に大切な仕事です」

と話し、寒い中でも針先に集中して作業をします。

網の目印「ヤシャ」

午前11時00分

鹿渡島定置

これは「ヤシャ」と呼ばれ、沖に設置してある網の目印。

大型船は網があることが分かりにくいため、大型船のレーダーに反応させ、

網を避けてもらうためのものです。

魚の加工作業

午前11時30分

魚工房

旬(鹿渡島定置直営店)

水揚げされた魚を即、加工する場所もあります。

魚を市場へ出すだけではなく、手を加え、魚に付加価値を付けて販売しています。

海に潜って網を修理

午後0時20分

鹿渡島漁港

沖にある簡単な網の修理は、業者に修理依頼するのではなく、

漁師が潜水スーツを着て、小型ボートで沖に行き、自ら潜って修理します。

いきいき七尾魚編

競りの開始

午前7時40分

七尾市公設地方卸売市場

市場に運ばれた魚がトラックから下ろされると、その場ですぐに競りが始まりました!

競り人と、魚屋や卸売りの人の間で、活気のいい声が飛び交います!

3軒の仲卸屋さん

午前8時30分

七尾市公設地方卸売市場

七尾市公設地方卸売市場の一角には、3つの仲卸会社が軒を連ねます。

旅館や民宿、量販店、飲食店などへ、競りで落とした魚を売り出します!

食卓にあがるまで

午前8時45分

市内スーパー

ここからは、スーパーで密着取材です。

市場で競り落としたタラやイワシ、サバなどは調理場へ運ばれます。

スーパーの裏側では

午前10時00分

市内スーパー

スーパーに運ばれた魚は、消費者が買いやすい状態で、提供されます。

刺身は、冊と切り身に。また、大きな魚は料理しやすい大きさに切られ、店頭に出されます。

開店早々お客さんが買い求めに

午前10時40分

市内スーパー

早朝、水揚げされた新鮮な「いきいき七尾魚」。

たくさんの人たちの手によって、店頭へと並べられました。

お客さんも、開店してから続々と訪れ、朝どれの魚を買い求めていました。

おいしい魚のおいしい旬

「いきいき七尾魚」とは、定置網で水揚げされた魚のこと。

恵まれた七尾の里海は、四季折々に豊富な魚種が水揚げされています。

そんな代表格の魚を見てみましょう。

いきいき七尾の魚たち

河豚(フグ)

4月から6月

能登地域には産卵時期にトラフグをはじめマフグ、ゴマフグ、シロサバフグなど多様なフグが水揚げされます。

石川県の天然フグ類漁獲量は過去3年全国1位です。

白子はクリームのような滑らかな食感で、身は白身ですがしっかりとしたうまみがあります。

刺身や唐揚げ、鍋など様々な食べ方が楽しめます。

今「能登ふぐ」としてブランド化を進めており、市内でも食べられるお店が増えています。

鰤(ブリ)

11月から2月

冬の訪れを告げる雷鳴を伴う荒天を「ぶり起こし」と呼びます。

冬に捕れるブリは、身がしまり脂がたっぷりのっています。刺身はもちろん「ぶりしゃぶ」も人気です。

また、成長とともに「コゾクラ→フクラギ→ガンド→ブリ」と呼び名が変わるため出世魚として祝い事に利用されています。

伝統的な食としては、塩漬けしたブリの切り身をワラの荒縄で巻いて干す巻き鰤があります。

真鱈(マダラ)

12月から2月

冬に産卵のため水深200から500メートルの海底から沿岸へやってきます。

冬の鍋料理に欠かせない魚で身は柔らかく白子はクリーミーで濃厚な味わいです。

真子の「子付けのお刺身」は能登半島の冬を代表する一品。

能登島ではタラを主にした「ごっつおまつり」が2月に開催されています。

真鯵(マアジ)

4月から6月

沿岸から水深150メートルまで広い範囲で生息し年間を通して捕れる大衆魚です。

春から夏にかけてもっともおいしくなります。

マアジには回遊するものと沿岸に定着するものがいます。

同じマアジでも沿岸に定着するものは「根付きアジ」と呼ばれ黄色っぽい色をして脂がのって味が良いといわれています。

梭子魚(カマス)

9月から11月

小さいときには磯寄りに、大きくなるにつれ深い場所に移動。

夏の終盤から捕れ始める白身の魚で塩焼きが定番です。

黒鮪(クロマグロ)

5月から6月

春から初夏の頃に定置網で捕れます。

時々大物があがることも。「黒いダイヤ」ともよばれる高級食材です。

真鯖(マサバ)

4月から6月、12月から2月

春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下する

DHAやEPAなどが豊富に含まれた魚です。

真鯛(マダイ)

4月から5月

年間を通して捕れ、旬は春。

お祭りやおめでたい時によく食べられます。いろいろな料理に用いられます。

鯣烏賊(スルメイカ)

1月から3月

日本海全域で捕れ、刺身や焼き物、内臓を生かした塩辛、イカめし、丸干しといったさまざまな加工品があります。

鮟鱇(アンコウ)

10月から1月

水深30メートルから500メートルの海底に生息しヒレを使って移動します。

身は淡泊だが、肝は濃厚な味で「あんこう鍋」が有名です。

鰆(サワラ)

4月から5月、10月から11月

南の方に多くいる魚で昔は、あまり捕れませんでしたが、温暖化の影響で今では青森県などでも捕れます。

大きく鋭い歯があります。

障泥烏賊(アオリイカ)

9月から11月

秋には防波堤で「餌木」という疑似餌を使った釣りが幅広い年齢層に人気。

甘味があり主に刺身にして食べられます。

「いきいき七尾魚」旬カレンダー

さかなの名前

マダイ

4月から5月(その魚の最盛期)

6月から3月(その魚の漁獲時期)

マアジ

4月から6月(その魚の最盛期)

7月から1月(その魚の漁獲時期)

マサバ

4月から6月、12月から2月(その魚の最盛期)

7月から11月、3月(その魚の漁獲時期)

クロマグロ

5月から6月(その魚の最盛期)

7月(その魚の漁獲時期)

カマス

9月から11月(その魚の最盛期)

アオリイカ

9月から11月(その魚の最盛期)

サワラ

4月から5月、10月から11月(その魚の最盛期)

12月(その魚の漁獲時期)

アンコウ

10月から1月(その魚の最盛期)

9月、2月(その魚の漁獲時期)

フグ

4月から6月(その魚の最盛期)

10月から11月(その魚の漁獲時期)

ブリ

11月から2月(その魚の最盛期)

3月(その魚の漁獲時期)

マダラ

12月から2月(その魚の最盛期)

3月(その魚の漁獲時期)

スルメイカ

1月から3月(その魚の最盛期)

4月から5月、11月から12月(その魚の漁獲時期)

地産地消がいいね。みんなでいきいき七尾魚を食べよう!

岸端定置網組合直売所 朝とれ浜売り所

市民をはじめ、金沢市や富山県、遠くは岐阜県高山市から、定置網で捕れた魚を求めて来る人がいるほどの人気店。「魚が嫌いだった子どもが、ここの魚は食べられるようになった」という話があるほど、鮮度抜群。魚は処理せず、直接販売のみとなっています。

住所:庵町ム部75番地

営業日:平日・土曜日・祝日

営業時間:午前7時から午前8時

電話:59-1511

鹿渡島定置直売所 魚工房 旬

水揚げされた新鮮な魚で、漁師自ら作る加工食品が好評。そして、水揚げされたばかりの鮮魚も、鹿渡島漁港内で販売しています。漁港で購入した魚は、「魚工房旬」で内臓の処理や刺身などにも対応してくれます。また、全国発送もできます。

住所:鵜浦漁港内

営業日:平日・土曜日・祝日

営業時間:加工品販売

午前7時から午後1時

魚販売

午前6時から午前8時

電話:58-7480

天候により、営業時間の変更があります。

漁師が作る料理の醍醐味

魚のことを知りつくした漁師だから提供できる豪快な雰囲気と繊細な味わい。

市場には出回らない素材を生かし、お客様を喜ばせたい

竹中 勉(株式会社鹿渡島定置)

6年前、43歳の遅咲きで漁師になった竹中さん。

「長年、寿司職人をしているが、自分で水揚げし、自分の目で選んだ魚をお客様に提供したいという思いから、漁師にもなった。けれど、続けられるか本当に不安だった」と駆け出しの頃を振り返る。平成23年に直売所「魚工房旬」がオープンした際、寿司職人の腕を買われ、工場長に抜擢。魚をさばいたり、加工食品を手掛けたりと、鹿渡島定置になくてはならない人材となっている。「七尾のお客様は、いつも新鮮な魚を食べているため、舌が肥えている。そんなお客様の期待に応えるため、漁師をしていることや、鹿渡島定置で取り組んでいる鮮度を長持ちさせる”神経締め”の強みを生かし、さらに新鮮な魚を提供しなければならないと思っている。市場に出回らないマグロやブリの心臓を使った料理を提供したり、ネタケースには、冊を陳列するのではなく、魚の姿のままで陳列したりしている。魚の姿のままで陳列していると、都会から来たお客様はすごく喜ぶんだよね」と、漁師であるからこその強みと気遣い、自信を持った口調で話してくれた。

大将寿司

大手町112番地

営業時間

午前11時30分から午後10時

電話52-1356

写真キャプション

おすすめの一品「能登ふぐ冷しゃぶ」

身を厚く切り、表面は柔らかく刺身の食感が楽しめる贅沢な一品

自分で水揚げした魚を提供。味も鮮度も絶対の自信!

坂本 一之(鰀目大敷網株式会社)

31歳の若さで鰀目大敷網の副社長を務める坂本さん。坂本家は昭和初期から続く網元で、坂本さんは三代目となる。「親から話はなかったけれど、家業を継ごうという気持ちはあった」と話す。坂本さんは、最近の魚価や漁獲量の低迷に危機感を持っている。「これからの漁師は魚を捕るだけではなく、これまでやっていなかった斬新な発想と行動力が必要」と、漁師の未来像を描く。坂本さんは発想が生まれたら、必ず行動に移すタイプ。これまでに、顧客への宅配発送や魚のブランド化に努めてきた。さらに、「漁師だからこそ伝えられるものがある」と、海鮮丼専門店の経営にも乗り出した。「店頭に並ぶのは、水揚げされた中でも一番いい魚。一級品ですよ」。店舗は、道の駅にあることもあって、観光客からの人気も高い。「今後も若いからこそ独創的な発想と行動力で、「いきいき七尾魚」を全国に広めていきたい」と希望に満ちた表情で話してくれた。

大漁屋

能登島向田町112-14道の駅のとじま内

営業時間

午前10時30分から午後5時

電話090-6278-1305

写真キャプション

おすすめの一品「漁師丼」

これが能登島の漁師めし!

米や味噌もすべて能登島産!

若手漁師奮闘記

新鮮でうまい魚を届けたい・・・

現在、そしてこれからの「いきいき七尾魚」を支える若手漁師5人が一堂に会し、座談会を開催。

それぞれ、異なる定置網の会社で活躍する5人からは、漁師だからこそ知っている裏話や、胸に秘める思いも語られた。

漁師になったきっかけは?

勝木

父が漁師で、小さい頃から「漁師になれよ」と言われていた。

そこまで深く考えたことはなかったけれど、魚を食べることは大好きだった。

東京の大学に在学中、魚があまりおいしくなかった。

その時、七尾の魚は本当においしいんだと気づき、漁師をすれば、おいしい魚が食べられると思った。

あと、小さい頃から地元の漁師たちが魚を捕る姿を見ていたので、育った環境がそうさせたのかもしれない。

行長

高校を卒業した時、朝が早くて、厳しい漁師をするつもりはなく、サラリーマンを2年くらいやっていた。

家から漁師の会社が近くて、時々、手伝いをしているうちに、漁師の世界にのめり込み、だんだん好きになっていった。

勝木さんと一緒で、生まれ育った環境がそうさせたんだと思う。

坂本

高校卒業後、自衛隊に入隊していた。

任期が終わり、地元に帰った時、知り合いから「手伝いに来んか」と声が掛かり、今の会社に。

最初は、仕事を探す間だけという考えだったけど、初めて船に乗った時、意味が分からんくらい魚がおって「ガンド2本、持ってけや」と、もらったのを覚えてる。

そこから、自然に年月を重ね今に至っている。

順毛

僕は、釣りが趣味で、同級生が鹿渡島定置で働いていたこともあって、よく遊びに行っていた。

「人おらんし、働いてみれば」と声が掛かったけれど、別の仕事もしていたし、家族もいたので断った。

それからも、熱心に誘われたけれど、家族を養っていくためにも、自分だけ好きなことをしていてはいけないと思って断り続けた。

けれど、嫁から「気になるなら、行けば?嫌やったら辞めればいいし」と言われ、漁師になることを決意して入社した。

中能登町出身で、海のそばに育っていない僕からすれば、漁師は一子相伝のイメージがあって、不安もあったけれど、ここまでくることができた。

平野

じいちゃんが定置網に行っていて、小さい頃から新鮮な魚を食べていた。

父親も岸端に勤めていて、「どうや?」と声を掛けられ、心を動かされ漁師になることを決意した。

親子で漁師をやることに、やりにくい部分もあったが、ここまで続けてこれた。

漁師になって良かったこと。大変なこと。

行長

屋根がある仕事より、自然の中で、開放的に仕事ができるのがいい。

伸び伸びと仕事ができるから、ストレスもあまり感じない。

順毛

やりがいを感じるのは、お客さんからの「ありがとう」の声。

個人的には、「鹿渡島さんの魚おいしいよ」と言われることが、とてもうれしい。

また、頑張ろうと思う。

坂本

俺は、朝、魚を捕りに行く時がわくわくして楽しい。

毎日捕れるものが違うという点も良い。

順毛

良いこともあるけど、大変なことも多いね。

しけた時は、船に乗っとるだけでも大変で、普段、簡単にできることも、一苦労する。

そんな危険な状況でも出港するのが、漁師の仕事。

勝木

本当に荒れてる時は、作業が大変だよね。

こんな時、漁師でも船酔いするところだけど、そんなことを言っていられないよね。

酔っとるどころじゃないし、それこそ、アドレナリンが出まくりやね。

平野

そやな。

あとは、台風が通った後の急潮が大変。

潮の流れが速くなって、網を傷める原因の一つ。

海が川みたいになれんわ。

この時期、捕りたい魚は?

勝木

この魚を捕りたいと思っても、なかなか思うようにはいかないのが定置網漁。

今の時期でいえばサワラがおってくれんかなぁと思う。

サワラは、個体が大きくて、選別も含め、出荷までの仕事がスムーズにできる。

坂本

僕らの漁場は、春先の漁獲量が多いか少ないかで、一年の収益が決まるもんで。

順毛

今は、だんだん捕れなくなっているけれど、アジがいいかな。

春先の魚が入ってくれればうれしいね。

これまでに捕れた珍しい魚は?

行長

リュウグウノツカイは、今年2回捕ったよ。

平野

へぇ。

うちは、ダイオウイカを3回くらい捕ったな。

坂本

俺のところは、時々、何百というイルカの群れを見ることがある。

見渡す限りのイルカ。

勝木

水族館にいれば、可愛いけど、網に入っても売りものにならないので勘弁してほしい。

平野

そやな。

あと、サメやマンボウも大変やな。

サメは回転して、網を破る。

そこだけ、ねじ切れたようになって、修理が大変になれんわ。

勝木

3メートルくらいのサメなら、ざらに網にかかるな。

順毛

あと、約10メートルのナガスクジラが捕れたことがあって、めちゃくちゃびっくりしたわ。

漁師の勤務時間は?

勝木

午前3時45分出航して、勤務終わりが午前11時くらい。

行長

うちは、午前3時半から午前11時半くらいかな。

平野

俺のところは、午前4時から午前11時くらいやわ。

順毛

僕のところは、午前3時から午後1時くらい。

僕らは、氷見の市場まで少し遠いから逆算して、他より早くしとるわ。

坂本

俺のところも、午前3時から。

漁から帰って、出荷とか網の修理して、終わるのが午後2時くらいかな。

漁師としての誇りや信念は?

順毛

僕は、子どもに見せても恥ずかしくない仕事をしようと、毎日心掛けている。

平野

俺は、毎日やっとることが、当たり前の仕事やと思っとるから、そういうことは、あんまり考えんわ。

勝木

魚を出荷するのが、俺らの仕事。

選別の早さや鮮度保持とか、消費者に提供しているということを常に考えて、今後、良くできるところは、良くしていきたい。

当たり前のことをきちっとやることだと思う。

行長

息子が2人おるけど、どちらか漁師をしてほしいと思っとる。

息子がそう思ってくれるような仕事をしたい。

漁師としての今後の目標は?

行長

ブリ1万本捕る!そのために、網を改良するとかやれることはやっていきたい。

もし息子が漁師になったら、親子で漁や魚の話をしたり「今日、こんなん捕れたよ。

お父さんのところどうやった」という会話もしてみたい。

平野

子どもを一人前に育てるためにも、漁師という仕事を一生懸命やりたい。

順毛

漁師になりたい若者に、「鹿渡島に入ってみたい」と言ってもらえるような、会社でありたい。

勝木

多方面への販路の拡大と、いろんな方法で、皆さんに食べていただくというのが目標。

少しずつだけど、付加価値を高めていければと思う。

坂本

魚だけ捕ってれば良いという時代じゃなくなってきている。

難しいところだと思うが、可能性は十分にあると思うので、今できることをしっかりやっていきたい。

写真キャプション

勝木俊介(33歳)

株式会社佐々波鰤網

漁師歴10年

行長聖(33歳)

寒鰤大敷網有限会社

漁師歴13年

坂本祐樹(36歳)

鰀目大敷網株式会社

漁師歴14年

順毛弘英(33歳)

株式会社鹿渡島定置

漁師歴10年

平野晋嗣(33歳)

岸端定置網組合

漁師歴15年

祝「ふるさとづくり大賞」内閣総理大臣賞受賞

斬新な発想と実行力で進化し続ける「鹿渡島定置」

「鹿渡島定置」は、規模や漁場の位置など、他の定置網と比べ、決して恵まれていない。

しかし、他の定置網でやっていないことを積極的に取り組み、今や全国から注目される存在となった。

これまでの取り組みを見ていきたい。

「鹿渡島定置」は・・・

鹿渡島定置は、富山湾と七尾湾に面した崎山半島の最北端にあります。平成4年に創業。平成8年に規模を拡大し、能登島野崎沖と崎山半島鹿渡島沖に定置網を設置し、操業しています。鹿渡島定置の特徴は、年功序列や勤続年数で役職などを決めるのではなく、漁業界では珍しい実力主義をとっていること。つまり、仕事への意欲や取得した技術が、給与に反映しやすい仕組みを取り入れています。昇進は年齢や経験ではなく、立候補制を採用。若い従業員のやる気を引き出します。

また、代表を務める酒井秀信さんは、平成13年に「酒井定置網研修館」を開設。これまでに新潟県や福井県、島根県のほか、スリランカへの技術指導や台湾といった、海外からの研修生も受け入れています。日本が誇る定置網の技術を、国内だけに留まらず、海外にまで広めているのです。「鹿渡島定置」の特徴は、まだ他にもあります。漁業界が、高齢化や担い手不足などの問題に直面している中、「鹿渡島定置」は現在、従業員は14人、船頭が33歳、20代の従業員が7人も在籍し、平均年齢はなんと36歳です。こんな若い漁師たちが、平成24年漁獲量は312トン、水揚げ金額は約7,700万円を記録。アジ類やイカ類、ブリ類が主に水揚げされています。

近年の魚価の低迷、資材や燃油の高騰などが経営を圧迫した際は、酒井社長をはじめ、若き漁師みんなで、作業終了後に何度も話し合った。「自分たちにできることは、魚価を上げるしかない」と結論付け、そこからいろいろな取り組みを開始したといいます。

海水シャーベット氷導入

鹿渡島定置で一番水揚げされる魚種は、単価の安いアジ類です。一番高値が付く寒ブリの漁獲は多くありません。

そこで、アジ類をはじめとする雑魚を高く売る工夫が必要だと、魚の付加価値を高めるため、品質向上に着手しました。

まず、鮮度を向上させることで品質が良くなり、高く売れるのではないかと考え、平成14年に殺菌装置付き海水シャーベット氷製造装置を導入。海水シャーベット氷を使うことで、鮮度が向上し、品質に自信が持てるようになりました。しかし、市場に出荷しても、なかなか価格に反映されず、自分たちで魚を売る取り組みとして、平成17年に自動製氷機を導入し、顧客への宅配便鮮魚販売を始めました。

神経締め

さらに、他の定置網との差別化を図る取り組みとして、平成24年、神経締めを習得するため、兵庫県明石浦漁協に出向き、研修を受けました。

神経締めは、せき髄に走る神経を破壊することで、死後硬直を遅らせることができます。

神経締めをした後も温度管理をしっかりと行うことで、他の魚とは違い、鮮度を長く維持できるのです。

その結果、首都圏に出荷するカツオやメジマグロなど、海上でしか神経締めができない魚は、特に新鮮なものが少ないため、お客様に喜ばれているそうです。

神経締めした鮮魚の販売を始めた結果、売り上げが大幅に上昇。

信頼を得ることもでき、首都圏のレストランや居酒屋の取引先が増えました。

魚工房旬

「鹿渡島定置」は、魚に付加価値を付けるための取り組みとして、値段の安い魚を加工することで、さらに魚価を上げようと、魚を加工する「魚工房旬」を設置しました。

8ページでも紹介した寿司職人の竹中さんに工場長を任せ、みりん干しや酢漬けなど、30種類以上を製造販売しています。

その中でもアカモクを加工した「海のじねんじょ」が大ヒットし、今ではアメリカやシンガポールにも輸出しています。

これらを取り組んだことで

「鹿渡島定置」が取り組んでいるものは、まだあります。

買い物が困難な高齢者のために移動販売車を導入。

勘や経験が基本だった漁師の世界で、「衛生および鮮度管理」「定置網の哲学」「定置網経営哲学」などといったマニュアルの作成に取り組んできました。

その結果、異業種の人と関わるようになり、今後のさらなる定置網の可能性を見い出せるようになったのです。

斬新な発想と実行力で、これまでにないことを取り入れた「鹿渡島定置」は、全国の漁業界から注目を浴びるようになり、日本で初めて「ふるさとづくり大賞内閣総理大臣賞」を受賞しました。

「会社は社員を愛し社員を守る。社員は会社を愛し会社を守る」という社訓を基に、今後もさらなる飛躍が期待されます。

写真キャプション

ふるさとづくり大賞受賞式(首相官邸)

若手漁師の力がいきいき七尾魚の明るい未来

七尾能登島定置網振興会会長

勝木省司

定置網の今後の可能性は?

ここ20年、若い漁師がどんどん増えています。

彼らをどのように育てていくかが重要になってくると思います。

振興会としては、先進地へ研修に行ったり、イベントや物産展に出展する機会を作ったりしていますが、今後の可能性を導き出して行くのは、それぞれの会社だと思います。

振興会として、できることは支援したいですが、それには限界があります。

会社でできることは、会社でしなければなりません。

そして、若い漁師が増えた今、彼らに成長してもらうことが、定置網の未来につながるはずです。

定置網の伝統技法を守っていくには

昔の定置網は、わらで編んだ網で、魚を捕っていました。

私たちの漁場は、外海と違い、年間を通して海中に網をつけておける場所ですが、一方で網への負担は大きく、わらで編んだ網は、年に2回ほど交換しなければならなかったと聞いています。

時代が進むにつれ、化学繊維で作られた網が主流になり、当然、交換する回数が少なくなりました。

また、船にクレーンやリフトも整備され、だんだんと作業が楽な方向に進み、若い漁師が伝統技法を学ぶ機会も減ってきました。

それでも、若い漁師が毎日の仕事を何気なくこなすだけではなく、常に良い方向に改革しようと考えながら仕事をしてくれれば、自然と技術が身に付き、担い手の継承へとつながると思います。

振興会としても、若い漁師を支援する立場でありたいです。

研修や違った職種の人と交流する場を提供し、何かを感じ取ってもらいたいです。

成功している場所には、必ず光り輝く人がいます。

若い漁師にそんな人と交流してもらう機会を作ってやりたいです。そういった場に参加すれば、自分がこれまで気が付かなかったことに気付くことができますし、たくさんの人脈も築けます。

そこで、経験したこと、学んだことをそれぞれの会社に持ち帰り、還元してくれればうれしいです。

伝統技法を守っていくことはとても大事ですが、これまで継承されてきた理由は、少しずつ、良い方向へ改革してきたからこそだと思います。

改革することはとても大変なことです。

それでも一歩を踏み出さなければなりません。

どうしたらもっと良くなるかを考え、独自性を加えることが、伝統を作り、守っていくことにつながると思います。

「いきいき七尾魚」をブランド化した経緯

「いきいき七尾魚」とは、七尾の定置網で捕った魚のことです。

ここ数年、全国的にもだんだんと認められるようになりました。

約30年前は、漁師自体が社会的に認められていない時代でした。

過酷な労働条件で、出港すれば、常に危険と隣り合わせの仕事です。

当時は、定置網漁自体も、市民にも、あまり認知されていなかったと思います。

何とかその見方を改めたいという意思を持って、この振興会を作り、市内外、そして全国へ「いきいき七尾魚」をPRしてきました。

ここは、全国的に見ても、素晴らしい漁場です。

商標登録を行ったり看板を作ったり、市内外のいろいろな場所に出てPRしていくうちに、徐々に認められました。

「いきいき七尾魚」が知られ、漁師という職業が社会に認められてきたからこそ、若い漁師が増えたことにつながったのだと思います。

強い思いがあれば、必ず実現できるという気持ちを持って取り組んできました。

「いきいき七尾魚」の展望

北陸新幹線の金沢開業や能越自動車道の七尾までの開通。

交通網はだんだんと整備されました。

それでも、その交通網が今後、水産業にどのように影響するかは、まだまだ分かりません。

しかし、ビッグチャンスであることは確実です。

「何かできることはないか!何とかせんとだめや!」という考えを常に持って、行動を起こし、この交通網をうまく使って、事業を展開していかなければなりません。

ここは定置網の規模も水揚げ量も全国的に見てトップクラスで、とても良い漁場です。

漁港から漁場までが近いということで、燃料費も安いし、水揚げされた魚の鮮度管理も、それぞれの会社で徹底されています。

そういった場所で、水揚げされ、消費者に提供できる「いきいき七尾魚」の未来は、決して暗いものではありません。

究極的に言えば、七尾市で「いきいき七尾魚」を食べることができる食堂、直販できる場所を作ることだと考えています。

各会社が、その日に水揚げした魚を持ちより、七尾市民へ提供する。

直販できる場所があれば、「東京にやろうか。大阪にやろうか」と思ってくれる市民もいるだろうし、もちろん「いきいき七尾魚」のPRにもつながります。

若い漁師が増えた今だからこそ、彼らを育て、彼らのつながりをもっと深いものにして、気持ちを一つにすること。

若い漁師たちの連携が生まれ、必ず七尾市民へ提供しやすいかたちが生まれます。

そうなれば、市民が気軽に足を運んで、もっともっと「いきいき七尾魚」が認知される明るい未来が切り開けるはずだと思います。

お問い合わせ

所属課室:企画振興部広報広聴課

〒926-8611石川県七尾市袖ケ江町イ部25番地

電話番号:0767-53-8423

ファクス番号:0767-52-0374

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