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更新日:2020年4月3日

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1ページ(表紙)

広報ななお
七尾ごころ

令和2年(2020年)4月号No.187

七尾城の歴史を今に未来に-

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特別対談
七尾城に見る可能性

奈良大学教授千田嘉博
七尾市長不嶋豊和

奈良大学教授千田嘉博プロフィール
●昭和38年/愛知県に生まれる
●現在/奈良大学教授、大阪大学博士(文学)、城郭考古学者
中世・近世城郭の考古学的研究を行い、日本各地の城の発掘調査・整備に関わるほか、世界の城と日本の城の比較研究も行っている。「織豊系城郭の形成」(東京大学出版会)など多数の著書を執筆。NHK大河ドラマ「真田丸」の真田丸城郭考証を務めたほか、「歴史秘話ヒストリア」、「趣味どきっ!お城へ行こう!」などのテレビ番組にも出演し、分かりやすい解説で「城博士」として人気を博している。

全国で城への関心が高まっている今、国内最大級の山城である国史跡「七尾城跡」を訪れる人が増えている。市では、いまだ謎が多い中心部の発掘調査を開始し、より多くの実態を解明していく。史跡七尾城跡整備基本計画策定委員で、日本を代表する城郭考古学者、奈良大学の千田嘉博教授に七尾城の今後の保存活用方法などを伺った。

市長:千田教授には、講演やテレビ番組など、あらゆる機会で七尾城の魅力をご紹介いただき、本当にありがとうございます。七尾城跡に関する計画の策定にもご協力いただき、航空レーザ測量により七尾城の全貌が明らかになりました。千田教授の監修で七尾城の実像を復元したCGも作ることができました。このCGを見て、単なる山という存在から重要な遺産であると気付いた市民も多いようです。
今後は、これまで以上にご指導をいただきながら、取り組みを加速していきたいと思っております。

(写真説明)七尾城跡復元CG画像

七尾城は国宝級の遺跡

千田:日本には、琉球の人々が造ったグスクや北海道のアイヌの人々が造ったチャシを含め、3万を超える城がありました。特に戦国時代から江戸時代初めにかけては、最もたくさんの城が造られました。
戦が多かったこの時代を象徴するのが山城で、その中でも七尾城は、これまで地域の皆さんが大切に守ってこられたおかげで、全国屈指の広大な山城の跡がほぼ完全に残っており、麓には城下町の跡まで残っています。すでに国の史跡に指定されていますが、戦国の山城と城下の全てが一体的に残っていることから、本来は国の特別史跡すなわち遺跡の国宝といってもいいほどの価値を持っています。
全国的に城が人気になっている中で、七尾城を見に来たいと思う人が増えているということは、七尾城の素晴らしい価値に皆さんが気付いてきたということだと思います。

樹木の管理が魅力向上の鍵

市長:七尾城に関しては、これまで史跡の追加指定や公有地化に取り組んできましたが、令和2年度からは、予算を計上して七尾城の保存活用に向けたさまざまな事業に着手していきます。
まずは、文化庁や専門家のご指導をいただきながら、七尾城中心部の樹木を管理して景観整備をさらに進めます。麓からは城跡が分かりにくかったり、現地に行っても石垣が樹木に隠れて見えにくかったりする現状を少しでも解消したいと思っています。そして、中心部はもちろんですが、城の範囲であったとされている城山展望台の南側の富山湾側も景観整備して、七尾湾から富山湾まで360度ぐるりと見渡せるようになるといいのではないかと思っています。
千田:先ほど七尾城へ行ってきました。樹木が整理され、本丸から市街地を望む景観が良くなっていると感じました。こうした樹木管理をさらに進めていただくと、七尾城のイメージが一新されると思います。

市長:七尾城は見晴らしの良さが魅力ですので、訪れた人は、戦国時代にタイムスリップし、上杉謙信になりきって「九月十三夜」を吟じていただくのもいいのではないかと思っています。
千田:歴史を体感できる景色を見ることができるということになりますね。
市が、最新の山城の調査方法である航空レーザ測量図を作成してくださって、研究面からも七尾城の全貌がつかめるようになりました。この航空レーザ測量図を見ると、山の全部が城になっていたことが見事に分かります。ところが、樹木に覆われていると、城を訪れても、七つの尾根の峰々に城を築いたすごさが分かりません。
樹木を管理して城の状況が見て取れるようになると、七尾城がいかにすごい城だったかということを体感していただけるようになると思います。天空の城として有名な兵庫県の竹田城は、石垣の保全のために石垣の周囲の木を伐採したところ、結果的に麓からも石垣が見えるようになって大人気になりました。
七尾城の魅力を活かしていくには、現在策定中の史跡七尾城跡整備基本計画の中に樹木を適正にコントロールする方針を示し、実行に移していくことが大切だと思います。七尾城は、竹田城よりもはるかに規模が大きいので、もっとすごい城の姿が見えてくると思います。

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七尾城中心部初の発掘調査

市長:現在、史跡七尾城跡整備基本計画の策定を進めているところですが、令和2年度は、計画の策定に先立って、文化庁の理解も得ながら、中心部の発掘調査にも着手したいと思います。場合によっては、市独自の調査を行うことも視野に入れて、しっかりと取り組んでいきたいと思っています。
調査を進めることで、七尾城の構造や当時の生活を解明する新たな発見があれば、七尾城もさらに脚光を浴びることができます。千田教授には、この点もぜひご指導いただければと思います。
千田:きっと良い成果が得られると思います。現地には調度丸に見られるような武家屋敷の跡が随所に残っていますし、庭と思われる遺構も確認できます。発掘調査によって、山の中に戦国時代の武家屋敷が建ち並ぶ様子が見えてくるのではないでしょうか。
ただ、全貌を明らかにするためには、できる限り広い範囲で発掘するのが効果的だと思います。広く掘ることによって屋敷の全貌が明らかになり、七尾城の素晴らしさも体感いただけるのではないかと思います。
七尾城は全国のお城ファンに注目されている城です。できることならば、発掘調査中は柵で囲って見えないようにするのではなく、工夫して調査の様子を常に公開していただきたいと思います。
市長:現地説明会ではなく、調査風景をそのまま公開するということですね。
千田:市民や地元の学校の児童や生徒の皆さんが参加する、体験発掘も実施できればいいですね。小学生や中学生が大人になった時に、七尾城の発掘調査に参加したと言えるような思い出になればいいと思います。
市長:例えば、天目茶碗の破片が展示されたとき、自分が掘ったものだと分かるように展示の仕方なども工夫して、市民と七尾城を繋ぐ取り組みが大切だということですね。
千田:中心部の発掘調査では、戦国時代の建物跡や、井戸、トイレ、かまどなど当時の暮らしぶりを知る痕跡が発見されると思います。こうした新たな発掘成果をどのように活用し、整備していくのかが次の課題となります。

(写真説明)調度丸採集天目茶碗

大手道の登山口に駐車場を整備

市長:令和2年度には、麓まで車で来て大手道を登る人のために、駐車場の整備も行います。私が高校生の時は、遠足で大手道を登山したものですが、最近の子どもたちはあまり登っていないようです。逆に、4年ほど前から、都会の子どもたちが教育旅行で大手道を登っています。
将来的には大手道を活用して、トレッキングで快適に登れるように整備していきたいと思っています。駐車場から本丸までの大手道を整備し、当時の面影を体感していただければいいのではないかと思っています。
千田:麓の駐車場整備は、全国から車で訪れる人にとっては、何よりもありがたい対応だと思います。
大手道は、戦国時代の面影をとどめていますが、残念ながら幅が少し狭くなっています。ぜひ、当時の規模を部分的にでも復元していただければと願っています。

建物復元の可能性

市長:七尾城を描いた建物図面などの復元資料がない現状では、建物の復元は難しいでしょうか。
千田:一般論として文化財の立体復元は、古くなればなるほど造りやすく、新しくなればなるほど造りにくくなります。金沢城は絵図などの残っている資料を基に建物を復元していますが、細部まで忠実に復元しなければならないため造りにくいのです。縄文時代や弥生時代の遺跡は、絵図がないので発掘成果だけで復元します。戦国時代の遺跡は、発掘調査でしっかりとした成果が出てくれば、福井県の一乗谷朝倉氏遺跡や島根県の月山富田城のように立体復元も可能です。
七尾城は規模が大きいですが、場所を選んで立体復元整備していくことで将来的には可能だと思います。
市長:発掘調査を積み重ねていき新たな成果が得られれば、立体復元も不可能ではないということですね。
千田:まずは、学術的調査を継続しながら、成果を蓄積することが大切です。先ほどの話とも重なりますが、発掘調査情報を市役所内部はもちろん、旅行会社などの観光分野とも連携しながら発信して、七尾城への誘客に取り組んでいただきたいと思います。
例えば「七尾城を発掘している今を見に行こう」というツアーを企画すれば、たくさんの人が訪れると思います。
夜には皆さんに集まっていただいて、特別に発掘の最新情報を語っていただければ、喜ばれると思います。
市長:和倉に泊まって、しっかりとおいしものを食べていただき、土産も買っていただければ一石三鳥のような効果がありますね。
七尾城の整備は、50年、100年プロジェクトだと考えていますが、しっかり取り組んで少しでも早めていかなければならないと決意を新たにしました。
教育委員会の体制を強化するとともに、専門家の皆さんとの現地指導体制の仕組みが整ってくれば、今後の発掘調査にも弾みがつくと思います。引き続きよろしくお願いします。
千田:お手伝いさせていただければ、とてもうれしいです。
市長:本日は、貴重なお話ありがとうございました。

(写真説明)七尾城跡本丸復元CG画像

お問い合わせ

所属課室:企画振興部広報広聴課

〒926-8611石川県七尾市袖ケ江町イ部25番地

電話番号:0767-53-8423

ファクス番号:0767-52-0374

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