本文へスキップします。

ここから本文です。

更新日:2018年12月5日

1~7ページ

1ページ

広報ななお
七尾ごころ
平成30年(2018年)12月号No.171

心に残るふるさとの響き

2~7ページ

ふるさとと君たちの未来のために
~自分たちの知識や技能を伝える「町の先生」~

地域に眠っている人材を掘り起こす

人口減少や少子高齢化が進み、統合のため中学校が市街地に移転した田鶴浜地区。住民と子どもたちの交流が減り、先代から受け継いだ祭りなどの地域行事が縮小されつつある中、田鶴浜地区地域づくり協議会は平成28年度から「地域づくりは人づくり」を活動テーマに、「町の先生(人材バンク)」事業に取り組み始めた。
この事業は地域に眠っているさまざまな知識や技能を持つ住民を発掘し、町の先生として登録する仕組みを作り、学校やコミュニティセンター、各種団体などが行う生涯学習活動に講師の紹介を行うもの。住民の知識や技能を伝える場を通して、次の世代に郷土への理解や愛着を深めてもらおうと考えた。
町の先生は、田鶴浜地区に居住する住民と働く人を対象とし、指導内容は美術や書道、工芸、スポーツなど15の分野にわたる。現在登録者は100人を超え、保育園や小学校、コミュニティセンターなどからの派遣依頼に応え活動を重ねてきた町の先生は、着実に住民の生涯学習活動を後押ししている。
今回は、田鶴浜地区地域づくり協議会が進める町の先生の取り組みを紹介する。

「町の先生」プロジェクト始動

町の先生(人材バンク)事業の事務局は田鶴浜地区コミュニティセンターに置かれている。井上茂センター長は「地域づくり協議会生涯学習部会のメンバーが、何か地域が元気になる取り組みができないかと相談し、地域住民の『昔取った杵柄(きねづか)』を子や孫の世代に教えていこう、広く住民に呼び掛けようと町の先生事業に取り組み始めた」ときっかけを話した。町の先生の活動は、人材バンクに登録するだけで特にルールはなく、保育園や小学校、生涯学習団体などの依頼に応じて自分の持つ知識や技能などを自分なりに伝えることだという。

(用語説明)
昔取った杵柄:若い時に身に付けた技能や腕前

自身も十数年にわたり、保育園や小学校で、住吉神社の春祭り「住吉大祭」の歴史や木遣り音頭を教え続けている。「教えた子どもたちと、祭りの時に一緒に太鼓を叩いたり木遣りをうたったりできることが、指導者として何よりの喜びです」と、町の先生の魅力ややりがいを語る井上さん。今後、地域づくり協議会の取り組みとして「高齢者サロン」や「認知症カフェ」など地域住民の寄り合いの場に町の先生を招き、手芸品を作ったり、体操をしたりして認知症予防につなげていきたいと考えている。また新たな人材をさらに発掘し、引き続き町の先生事業を継続させていくことも目指している。
井上さんは「『町の先生に来てもらって良かった』『町の先生に登録して良かった』との声も届くようになった」と笑顔を見せる。「田鶴浜以外の地域でも、町の先生として活動している人がいる。田鶴浜の良いところを知ってもらう機会になればうれしい」と手応えを胸に、さらなる活性化に知恵を絞る。

(写真説明)
祭りは園児の元気な太鼓で幕を開ける

(写真説明)
地域住民でにぎわう寄り合いの場

インタビュー

町の先生は浜っ子を育てる力強い味方
田鶴浜小学校校長 渡辺 芳昭

町の先生には、学校の教員では知り得ない、教えきれない地域の伝統行事や歴史、伝統工芸、スポーツなどを児童に教えてもらい感謝の気持ちでいっぱいです。
人材も豊富で人と人とのつながりが強く、木遣り音頭保存会や地方史の会、スポーツクラブなど、学校にとって町の先生は力強い味方であり、田鶴浜地区の地域力を感じています。
地域の皆さんのふるさとを思う郷土愛は、児童にしっかりと伝わっています。

ふるさと伝統芸能子ども発表会に向けてサポート

井上さんら町の先生を含む木遣り音頭保存会や地方史の会のメンバーによる熱のこもった指導を受け、ふるさと伝統芸能子ども発表会に向けて練習する5年生の児童たち。住吉大祭で行われる行事「奉書迎え」や山車を引く時に打ち鳴らす太鼓やかね、「木遣り音頭」を発表会で披露しようと連日練習に打ち込んだ。保存会のメンバーから太鼓を打つリズムや木遣りをうたう時の発声の仕方などを教わり、本番前に全校児童の前で開かれたお披露目会では、練習の成果を発揮しようと緊張した表情を見せる児童もいた。
本番では、指導に当たったメンバーが児童と一緒に舞台の上で木遣り音頭をうたい、山車を引いて、地域一体となって祭りを再現した。発表が終わると会場から大きな拍手が送られ、児童は晴れ晴れとした笑顔を見せ、メンバーも達成感をにじませた。最後に児童がお世話になった人全員に感謝の気持ちを伝えると、代表して井上さんは「地域のことを学んでくれてありがとう」と述べ、メンバーは温かいまなざしで拍手を送った。

浜っ子の笑顔が私たちの喜びです

保育園や小学校で活動する町の先生に子どもたちへの思いやりややりがいを聞きました

觀田 健治さん(歴史)

田鶴浜地方史の会のメンバーで、6年生に「ふるさと歴史教室」を開き、町の伝統行事や歴史などを伝えています。毎年数枚、名所や旧跡などに設置する銘板の製作を指導し、今では37枚にもなりました。
子どもたちには、地域を理解してもらい、地域を愛する気持ちを持ってほしいと思っています。

加賀 忍さん(茶道)

5年程前から保育園で茶道を通じて礼儀作法と美学を教えています。子どもたちに地域のことを知ってもらうため、赤倉山などの雰囲気を出せるよう野点傘を飾るなど工夫しています。
子どもたちが物事を素直に吸収するところが素敵だと感じています。相手の気持ちを理解して、相手に対する思いやりを大切にする子になってほしいです。

立川 美治さん(伝統工芸)

田鶴浜の地場産業である田鶴浜建具の普及啓発になればと思い、児童の組子体験教室などに協力しています。
組子体験を通して360年余りの歴史がある田鶴浜建具を知ってもらう機会にしたいと思っています。
事前に準備した組子の部材を使い、子どもや高齢者が組子を作り上げた時の笑顔を見ると、やりがいを感じます。

谷渡 末枝さん(俳句)

小学校で俳句の指導をして10年目を迎えます。児童には、俳句を通して身近な自然や環境問題などに気付いたり、家族の絆や地域の行事などを大切にしたりして、ふるさとを忘れないでほしいです。
気軽に俳句を作っていろいろな俳句大会に投句して楽しんでもらいたいですし、入賞したことを聞くとうれしく思います。

子どもたちの「スポーツ大好き」の芽を育てたい

「小学校低学年からスポーツに触れる機会を作りたかった」と話すのは田鶴浜スポーツクラブ事務局の長田次夫さん。田鶴浜スポーツクラブでは、平成29年度に町の先生に登録している指導者の協力を得て、児童にスポーツの楽しさを知ってもらおうと「スポーツ体験のびのびクラブ」を創設。今年度は放課後児童クラブに通う1~5年生45人がバドミントンや卓球、陸上など5競技のスポーツを体験している。
長田さんは「のびのびクラブでは礼儀の大切さや感謝の気持ちを持つことから教えています。児童は、練習を重ね上手にできるようになると自信が付き、姿勢が変わってくる。目に見えて児童が変わります」とスポーツの重要性を説く。
「児童の楽しそうな様子に、指導者の町の先生もやりがいや生きがいを感じているようです」と相乗効果が生まれていると話す長田さん。町の先生とスポーツクラブの協働が、児童の笑顔の輪を広げスポーツを楽しむ心を育んでいる。

インタビュー

永井 陸斗さん(3年生)

友達といっぱい体を動かせるのが楽しいです。先生は怖い時もあるけれど、おもしろいから好き。協議をしている姿はかっこよくてすごいなと思います。

寺井 美鈴さん(3年生)

学年が違う子でもスポーツを通して仲良くなれるし、先生もおもしろくて楽しいです。
陸上を習って、前より走りが速くなったかなと思います。

和田 圭史(2年生)

ゲートボールは的に当てるのが難しかったけれど、うまくなるよう練習します。
バドミントンは先生とのラリーが64回も続いて楽しかったです。

町の先生が全国大会出場!

町の先生に登録し活動している上島藤男さんと永井和美さん。2人は11月4、5日に富山県魚津市で行われた第31回全国健康福祉祭とやま大会(ねんりんピック富山2018)の卓球競技に県代表として出場した。
永井さんは「ねんりんピックは初めての出場でしたが、県外の選手と対戦できて楽しかった。練習を重ねてさまざまな大会に出場したいですね」と意欲を見せ、上島さんは「卓球はいくつになってもできるし気軽に始めることができる。ねんりんピックでは、善戦できたかなと思います」と初出場した感想を述べ、「子どもたちにはスポーツに親しむ楽しさを知ってほしいし、のびのびクラブが卓球に触れるきっかけになればいいと思っています」と町の先生の一面も見せた。
2人の活躍はほかの町の先生の刺激にもなり、センター長の井上さんは「自分たちの仲間が全国大会に出場したことは喜ばしいこと。卓球を教わった子どもたちもきっと喜んでいる。これからもさまざまな分野で、町の先生が活躍することを楽しみにしています」と今後の活動に期待を寄せる。
地域の未来を明るくしようと立ち上がり、自ら目標を追い、輝き続ける町の先生。この「人財」が未来を担う「人財」を創り、ふるさとを大切に思う心を受け継いでいく。

お問い合わせ

所属課室:企画振興部広報広聴課

〒926-8611石川県七尾市袖ケ江町イ部25番地

電話番号:0767-53-8423

ファクス番号:0767-52-0374

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?