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ここ数年で増加の一途をたどる、野生動物による農作物への被害。石川県の調査では、平成29年度のイノシシによる被害総額は市内で1千万円を超えたことが明らかになった。被害の増加に伴い、狩猟免許取得を希望する人も増加。年4回ある免許取得試験には毎回70人近くが受験し、その大半をわな猟免許取得希望者が占めている。
「昔はイノシシを能登で見掛けることはほとんどありませんでした。近年増え続けるイノシシの捕獲や処理は、狩猟ではなく駆除。純粋に趣味として狩猟を楽しんでいたハンターにとって、この役割は正直苦痛ですね」と複雑な胸中を話す山本泰久さん。石川県猟友会七尾鹿島支部で副支部長を務める山本さんは、193人いる支部会員の中で数少ない若手ハンターである。「友人の狩猟する姿が楽しそうで、幼い頃ハンターをしていた父の影響もあり試験を受けました」と狩猟の世界に飛び込んだ山本さん。39歳の時にわな猟・網猟・第一種銃猟免許を取得し、毎年11月15日から2月15日までの狩猟期間は自前の散弾銃でカモやキジを捕獲し楽しんでいる。
イノシシの足跡や、餌を求めて地面を掘り起こした跡を見掛けるようになったのは4年ほど前から。自身が営む自動車修理工場でもイノシシとの衝突による損害事故を扱うことが増えてきた。「箱わなに掛かるのは幼いイノシシばかり。警戒心が強い親イノシシを捕獲しないことには、イノシシの繁殖の勢いを止めることは難しいです」と頭を抱える。
さらに山本さんが直面しているのは、狩猟界で急速に進む高齢化という課題。狩猟者には体力や判断力の面で年齢的にタイムリミットがあり、新規免許取得者の年齢層も高いことから、平均年齢61歳の七尾鹿島支部の会員が10年後にはほとんどいなくなるのではと懸念している。七尾鹿島鳥獣被害対策協議会が各地区に配置している有害鳥獣捕獲用の箱わなは、有害鳥獣捕獲隊員として市から選任されている支部会員でないと管理できない。会員の減少は、野生動物による被害を減らそうと策を講じる自治体や農家に厳しい現実を突き付ける。「最近は市から免許取得を支援する補助金が出たり、捕獲処理した人への奨励金が出たりとハンターが活動しやすい環境になっています」と、山本さん自身も石川県猟友会の理事として若い世代に狩猟者の魅力を発信するイベントに参加し、狩猟初心者を集めた猟銃の練習会で相談役を担うなど若手ハンターの確保にも熱を入れている。
「第一種銃猟免許は警察の猟銃所持許可要件が厳しく、取得しても手放してしまう人が多い。けれど、狩猟の楽しさは銃を持ってこそ味わえます」と力を込める山本さん。猟友会の先輩から狩猟犬の使い方や捕獲したキジやカモのさばき方を教わり、狩猟の楽しみ方が広がったと笑顔で話す。「仲間と悩みや知りたいことを語り合えるネットワークづくりにも力を入れています。興味のある人はぜひ免許を取得して、一緒に狩猟を楽しみましょう」と狩猟界に新たな一手を打ち出そうと意気込む。