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更新日:2023年12月5日

6~11ページ(演劇は、人と人をつなぐ文化だ)

「無名塾+市民合同公演」として、10月20日から11月5日にかけて全15公演が行われた「等伯-反骨の画聖-」。
市民がキャストとして出演するという異例の試みが行われた本公演は、これまで共に舞台を作り上げてきた市民と無名塾の物語に、新たな1ページを刻みました。

観客の心を震わせる等伯の生きざま

いしかわ百万石文化祭2023七尾市地域文化発信事業として行われた本公演。七尾が生んだ希代の絵師「長谷川等伯」の生涯を無名塾主宰・仲代達矢さんの演出で舞台化し、主人公の等伯を無名塾13期生の赤羽秀之さんが演じた。
物語は、長谷川信春(等伯の青年時代の名)と等伯が同一人物という説の確証を得るため、美術館の学芸員が信春に扮して400年前にタイムトリップするという設定で、序盤は、等伯が京の都で名を揚げるまでの雌伏の時代を中心に進行。日の目を見ない腹立たしさ、当時の画壇の中心である狩野派への野心などが包み隠さず描かれており、それがかえって等伯の人間味を引き立て、見る者を物語の世界へと引き込んでいく。
「波乱万丈な生きざまが等伯の魅力」と赤羽さんが語るように、物語は大きな転換点を経て佳境へ。終盤、筆を手にした等伯が一心不乱に松林を描く様は圧巻で、その鬼気迫る姿に客席から惜しみない拍手が送られた。
観客からは「等伯の心情の描き方が美しく、感動した」「素晴らしい公演をありがとう」と賛辞が送られ、舞台は大盛況のうちに幕を下ろした。
赤羽さんは本公演を「等伯の魅力的な生きざまを伝えることができたら、感動していただける作品になる」と話していたが、逆境の中を生き、花開いた「反骨の画聖」長谷川等伯の生きざまは、確かに私たちの心に感動を届けてくれた。

写真撮影:石川純

  1. 信春と等伯が対峙する場面
  2. 中年夫婦(市民キャスト)に見送られ、信春が七尾から京の都へ旅立つ場面
  3. 長谷川久蔵(長男)と等伯が言い争う場面

等伯の描きたいものを知ることができました!

等伯が、最後に自分の描きたいものに気付いて描く場面が、迫力があって引き込まれました。多くの人に長谷川等伯を知ってほしいです。
中島中学校3年前田将汰さん

等伯の生きざまや仲代さんの演出に感動!


等伯の歴史を知り感銘を受けました。能登の風景が素晴らしく、舞台奥の扉が開く演出にも感動。たくさんの拍手を送りました。
千葉県から観劇に来た皆さん

市民キャストが奮闘感動を生んだ公演の舞台裏

志を共に舞台を高みへ

市民キャストが担うのは、村人や等伯の弟子といった役で、役者との掛け合いのセリフもあるため責任は重大だ。市民キャストの公演にかける思いは強く、県外からの参加者の中には、アルバイトをしながら地元の民家を借りて滞在する人もいた。
9月初旬から無名塾は東京で、市民キャストは七尾で稽古を始めた。無名塾の一同が合流すると、セリフの間合いや細かな所作など、稽古はより一層熱が入った。
無名塾からは「共志高峰」と書かれた絵馬が市民キャストに贈られた。共に素晴らしい舞台を作り上げようというエールに、受け取った市民キャストは意気に感じたことだろう。
公演が進むにつれて、市民キャストと無名塾の絆はさらに深まった。塾員が毎日あいさつに訪れるなど活発なコミュニケーションが行われ、日ごとに結束力が強くなっていった。
千秋楽の上演前には、無名塾の一同が市民キャストの楽屋を訪れ、最後の公演に向けて団結を深めた。最終日ということで、市民キャストには気負いが見られるかと思ったが、普段通りの様子で頼もしささえ感じた。
本番での演技も堂々たるもので、舞台上での顔付きや立ち振る舞いは役者そのもの。これまでの集大成となる芝居を大勢の演劇ファンに見せつけた。
大きな拍手が鳴り止まぬ中、無名塾と共に3度のカーテンコールを行った市民キャスト。その表情は、公演を最後まで成し遂げた充実感であふれていた。
これは、無名塾と築き上げてきた七尾の演劇文化だからこそ、味わうことができたのだろう。市民キャストの皆さんには、どうかこの文化を多くの人に伝えてほしい。

写真説明
無名塾から市民キャストに贈られた絵馬「共志高峰」は無名塾と志を共に舞台の高みを目指す意味を込めた造語
無名塾との合同稽古の様子
信春役の本郷弦さんと記念撮影する様子

市民参加型の演劇をこれからも山下珠美さん(七尾市)

演技を学んで市民劇団の活動に生かしたいと思い、挑戦しました。無名塾の皆さんと同じ舞台に立てたのは大きな喜びで、特別なことだと改めて実感しています。
県内外から集まった市民キャストの皆さんとは、アットホームな雰囲気で大きな家族のように過ごさせてもらいました。市民参加型の作品だからこそ、県外からでも参加しようという気持ちにつながるのではないでしょうか。これは七尾の演劇文化ならではだと思います。
この文化がここまで続いてきたのは、たくさんの人の支えがあったからだと思います。これからもこの文化を残していってほしいです。

七尾の演劇文化を次の世代へ勢登健雄さん(東京都)

高校生の時に、地元中島町の能登演劇堂で初めて見た無名塾の舞台に衝撃を受け、役者を志しました。無名塾の皆さんが培ってきた芝居の考え方を肌で感じることができ、とても勉強になりました。そして、お互い刺激をもらいながら演じることの面白さに気付く、とても価値のある時間だったと思います。お客さんの反応を感じながら、毎回違うものになることも舞台の醍醐味です。
今回、中島中学校の皆さんが観劇してくれました。もっとたくさんの若い世代が演劇に興味を持ってほしいです。地元出身者として、演劇文化を次世代につなげていきたいです。

関わった皆さんの優しさに感謝山内凜さん(東京都)

昨年の「いのちぼうにふろう物語」がきっかけで役者を志し、今回をまたとないチャンスだと思い、応募しました。
演技経験がなく不安や緊張の連続でしたが、他の市民キャストや無名塾の皆さんのおかげで気持ちがほぐれました。
稽古の開始に合わせ、中島町でアルバイトをしながら生活しました。町の人がとても優しくて、人と人との交流の温かさとありがたさを強く感じ、目の前の人を尊重する姿勢が、芝居でも日常でも大事だと思いました。
この公演で、常に人間を見つめる役者の仕事に、改めて魅力を感じました。今回のご縁を大切に、今後も精進していきたいです。

多くの市民が公演を応援!

期間中、いしかわ百万石文化祭2023七尾の文化力発信協賛事業として、能登演劇堂内で、等伯PRコーナーや公演記念のお茶会(土・日限定)が開催され、多くの市民が公演を盛り上げました。

写真説明
等伯会による等伯PRコーナー
市文化協会の茶道会員によるお茶会

特別対談茶谷市長×赤羽秀之さん×円地晶子さん

「等伯-反骨の画聖-」の公演を終えた等伯役の赤羽秀之さんとお清(後妻)役の円地晶子さんに、公演の振り返りや七尾市への思いを伺いました。

市長:今回の公演は、いしかわ百万石文化祭2023七尾市地域文化発信事業としての公演でした。七尾が誇る天下の絵師・長谷川等伯と演劇文化を全国へ発信する機会にしたいと開催しました。作品は、美術館の学芸員が若き日の等伯に扮して、タイムトリップするという面白い内容で、長谷川等伯という人物の魅力をますます感じることができました。
赤羽:等伯は、波乱万丈な生きざまが本当に魅力的で、その役を演じることができるのは、すごく楽しみでしたし、やり応えのある仕事でした。
円地:等伯は、知れば知るほどすごい作品を残していますし、私も等伯という作品に携われたことが、すごく豊かな時間だったなと感じています。
市長:今回は仲代さんが演出されました。どのようなことにこだわっていましたか?
赤羽:演出家の方は通常だと、役のイメージを先に説明されることが多いですが、仲代さんは、役者が感じ取ったイメージを尊重してくれるので、とてもやりやすかったです。
円地:仲代さんは、それぞれの個性を大切にされるので、市民キャストの皆さんに対しても「皆さん全然違うから素敵だね」と、何度もおっしゃっていました。
市長:大扉が開く演出も良かったですね。
赤羽:なんといっても、能登演劇堂の特徴は舞台奥の扉が開くことですよね。日本全国どこにもない唯一無二のものですから。今回は、どうやって開けるのだろうと思っていましたが、市民キャストの方が出演してくれたおかげで、七尾から京都へ旅立つシーンが作られ、扉を開けることができました。
円地:当初は、物売りの女性だけが外から出てくるシーンでしたが、10人全員出演するシーンに変わり、すごく良い場面になったなと思います。
市長:本当にタイムトリップしたかのようなシーンでした。市民キャストの皆さんとの共演はいかがでしたか?
円地:稽古に合流した時点で、皆さん素敵に演じていて感動しました。ですが「もっと良くしたい。どうしたらいいですか?」とおっしゃるので、時間をかけて稽古しました。
赤羽:市民キャストの皆さんは、僕らの想像以上の演技で、合流する前からしっかり稽古していたのが分かったので、「もう少しできるだろう」と、より細かい部分にもこだわった稽古になりました。
市長:本当に素晴らしい演技でした。舞台の醍醐味はどういったところにありますか?
円地:見ている人とその場でいろいろなことを共有できるところですかね。等伯という作品も、等伯に共感したり、自分の人生と照らし合わせたり、皆さんの思いも含めて、最後の松林図を描くシーンに全員で到達していくという臨場感ですかね。
赤羽:僕の言葉じゃないのですが、初日の公演後、記念撮影のときに仲代さんが、「やっぱり舞台は、客席から見るものじゃなくて、立つものだな」とつぶやいたんですよ。
キャリア70年の俳優の心の底をみたようで、目頭が熱くなりましたね。
市長:そんな名優の仲代さんに、七尾市のことを「第二の故郷」とおっしゃっていただけてありがたいです。お二人の七尾市への思いを教えてください。
赤羽:七尾に住む皆さんが、演劇っていいものだなと気が付いてくれたおかげで能登演劇堂が建ち、それから「お帰り」「ただいま」みたいな感じで家族のような付き合いを30年近くさせていただいています。今回出演していただいた市民キャストの勢登さんは、地元の魚屋の息子さんなのですが、僕たちが昔、合宿していた頃は小学生とかで――。感慨深いですね。
円地:私は、能登演劇堂が建ってから入塾しているのですが、当時中島町の方が、ご飯を作ってくださったり、町のマラソン大会に参加させてもらったりと、温かさを全身で感じていました。それがこうしてずっとご縁が続いて、本当に毎回来るたびにうれしいです。
市長:ありがとうございます。最後に、市民の皆さんにメッセージをお願いします。
赤羽:今回の等伯公演にもたくさんの方にお越しいただき、本当にありがとうございました。また何年後かに再演できればうれしいです。今後も「演劇と言えば七尾」と全国の人に言ってもらえるよう、毎年の公演を成功させたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
円地:たくさんの方に等伯という作品を見ていただけて本当にうれしく思います。この作品は、無名塾にとっても七尾市民の皆さんにとっても、未来につながる大切な作品になったのではないかと感じています。そして七尾の演劇文化をこれからも一緒に盛り上げていけるよう、精進して参ります。また劇場でお会いできることを楽しみにしています。

お問い合わせ

所属課室:企画振興部広報広聴課

〒926-8611石川県七尾市袖ケ江町イ部25番地

電話番号:0767-53-8423

ファクス番号:0767-52-0374

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