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七尾のお店を応援しよう
新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響で市内の飲食店は売り上げの減少など打撃を受けています。そんな飲食店のために立ち上がったのは山王小学校の6年生。手作りのチラシを配り、七尾を盛り上げようと取り組みました。
「七尾のお店を応援しよう」プロジェクト始動
今年度最初の総合学習の授業で、児童から新型コロナの影響で経営危機に直面する市内の飲食店を心配する声が上がりました。「テイクアウト(持ち帰り)のみの営業で大丈夫なのか」「このままでは、閉店してしまうのでは」。児童たちは、市内の店を守るために自分たちができることを考えようと、授業で課題を探ることにしました。
まず、店の人に話を聞いてみようと、七尾青年会議所に企業紹介を打診し、6飲食店が協力に応じてくれました。6年生57人は6グループに分かれインタビューを実施。テイクアウトの導入の有無や新型コロナの感染防止対策など、飲食店の現状を学びました。売り上げ回復につながるアイデアとしてチラシを作ることにしました。
チラシに載せる内容を決めるため、自ら取材に当たった児童たち。学校から遠い店にはパソコンを使ってメールを送り、近い店には直接出向いて話を聞きました。
プロのチラシから学ぶ
目を引くチラシにするため、取材内容をまとめたチラシのデザイン案と、プロが作った飲食店のチラシを比較しました。プロが作ったチラシの良さは「写真が大きく載せてある」「おいしいと思える言葉が書いてある」などの意見が出ました。自分たちが考えたチラシの良さは「人気順位や吹き出しを使っている」「店長さんの思いを載せることができる」と児童たち。このことを参考に、もう一度チラシの内容を見直しました。
文字ばかりだったチラシは、写真を大きくして文字を少なく、見やすいものに修正。おすすめのメニューや店長の思いなどを加えて完成させ、店長に確認してもらいました。真剣なまなざしでチラシを見つめる店長。その様子に表情が硬くなる児童たちでしたが「良くできているね」と言ってもらい、ほっと肩をなでおろしていました。
(写真説明)プロが作ったチラシの良さを考えました。
どんな場所に置くと効果的か?
チラシの設置場所も自分たちで考えました。設置するチラシは各グループ千枚ずつ。どこに設置すればPR効果を出せるかを話し合いました。「客層の大半が観光客である店は観光客が訪れる場所に設置すればいいのではないか」、「常連客が多い店は、新規のお客さんに来てもらえる場所に置いた方がいいのでは」などの意見が出ました。さらに、協力店周辺の施設や世帯数を調べ、先生にアドバイスをもらいながら設置先を考えました。
(写真説明)香華園川原町店の店長にチラシを届けました。
(写真説明)みんなで協力してチラシを仕上げました。
(写真説明)「お世話になっております」とメールの文章を考えて送りました。
(写真説明)店舗周辺の世帯数を調べました。
チラシの設置場所への協力依頼も児童自ら行いました。チラシを届ける前には、お願いするときの練習も忘れません。授業の中で、それぞれのグループで練習の様子を発表し合い、足りない部分や「声が大きくて聞きやすかった」「笑顔で話していた」など良かったところを評価し合いました。(写真説明)好感を持ってもらえる話し方を練習しました。
チラシができるまで
協力店の一つ、お好み焼き平野屋を訪れた児童たち。緊張しながら、事前に考えてきた質問をし、杉本祐一店長から「食欲をそそるような色、例えばオレンジ色を使うと良い」とチラシ作りのアドバイスをもらいました。
最後に「大事にしていることは何ですか」と質問。「食べてもらった後に、幸せだと思ってもらえるようなお好み焼きを作っています」と目を細める杉本さんの思いをしっかりとメモしていました。
(1)協力店に取材
店長にインタビューしたことを参考に構成を考えます。
(2)プロのチラシと比較
プロが作ったチラシと比較すると、文字が多くて写真が小さいと分かりました。より見やすいように写真を大きく工夫しました。
(3)チラシ作成
色鉛筆を使ってデザインしたものをパソコンに取り込み、写真や文字を貼り付けました。
(4)確認
店長に出来栄えを確認してもらいました。
(5)チラシ完成
チラシ作りの経緯を書いた紙を貼り付けて完成。
協力店
お好み焼き 平野屋
香華園 川原町店
繁寿司
浜焼き 能登風土
焼肉 武蔵
レストラン ブロッサム
チラシを届ける
6月上旬から取り掛かり、7月末に6店舗合計6千枚が出来上がりました。3日間でビジネスホテルや和倉温泉駅観光案内所など市内15カ所を回り、チラシを配布した児童たち。「先日電話でお願いしたチラシを置かせてもらいたいのですが」と緊張した面持ちでチラシを渡していました。中には「カキはお好きですか」などと話し掛け、場を和ませる場面もありました。
チラシを配布し終えた児童たちは「チラシを見て、店にもっとお客さんが来てくれるようになったれたらうれしい」と話し、置いてもらったチラシを見つめる姿は、達成感に満ち溢れていました。
チラシを作った感想は?
こう思いました
高齢の人でもチラシを見やすいように、写真や文字を大きくしました。新型コロナでお客さんが減っているので、私たちが作ったチラシが少しでもお店の役に立ってほしいです。
小林(こばやし)花音(かのん)さん
こう思いました
チラシを置く場所も工夫しないと見てもらえないことを知ったので、みんなで考えました。一生懸命作ったので、チラシを見てお客さんが来てくれるとうれしいです。
石本(いしもと)聖空(れいあ)くん
チラシを見てどう感じましたか?
こう感じました
児童たちが地元の飲食店を応援しようという気持ちがうれしかったです。チラシ作りにも熱意が感じられ、店としても頑張ろうと思いました。
お好み焼き 平野屋
杉本(すぎもと)祐一(ゆういち)さん
こう感じました
写真を上手に使っていて分かりやすいので、ホテルのお客さまにも勧めやすいです。従業員の私たちも行ってみようと思います。
ホテルアリヴィオ
宿谷(しゅくたに)千晶(ちあき)さん
今回の学習は、子どもたちにとって貴重な学びになりました。取材では、質問の回答に対してさらに質問を重ねるなど会話を続け、内容をより深めていくことに苦戦していました。何度かやり取りを重ねるうちに、あいさつや会話を続ける力が付いたと思います。チラシ作りでは、一番伝えたいことを工夫して伝える力を養うことができたと思います。情報を発信する側として受け手がどのように感じるかといった、情報社会における相手を思いやる心も学べたのではないでしょうか。
今回の経験で培った伝える力や分析力、相手を思いやる心を、これからの学習や社会に出てからの仕事の中で生かしてくれるとうれしいです。そして、学習を通して高まった地域への関心。子どもたちには地域への誇りを持ち、人と人とのつながりを大切に育っていってほしいと思います。
6年生担任
達(たつ)航平(こうへい)先生、湯口(ゆぐに)拓也(たくや)先生
今こそみんなで応援しよう!
児童たちの発案で始まった「七尾のお店を応援しよう」プロジェクト。
ただチラシを作るだけでなく、自分たちのまちを知る機会にもなったようです。
「コロナに負けるな!」「今こそ応援しよう」という子どもたちの思いを受け取り、行動する人が増えてくれれば幸いです。