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特集:市民ボランティアが真心を込めて作った「770のひな人形展」
日本には、四季や風土から生まれたいろいろな年中行事があります。
正月に始まり、節分や端午の節句、七夕、十五夜、七五三、大晦日など、自然の流れに合わせた行事や人の節目に行事が行われています。
その中の一つ、3月に行われるひな祭りにはどんな意味があるのでしょうか。
七尾の春の風物詩となった「770のひな人形展」と併せて考えてみましょう。
天皇・皇后をかたどったひな人形です。
明治ごろまでは向かって右に内裏様(だいりさま)でしたが、大正ごろから西欧のしきたりにならって、向かって左に置くようになったそうです。
お囃子(はやし)の演奏をする人たちです。太鼓や大鼓(おおづつみ)、小鼓(こづつみ)や笛、謡(うたい)を担当します。
京都御所に植えられている橘と桜を表しています。
おひな様の嫁入り道具や乗り物などです。
天皇の宮殿に使える女官です。
「加えの銚子」「盃をのせた三方(さんぽう)」「長柄(ながえ)銚子」を持っています。
真ん中が女官長です。
結婚しているので眉毛がありません。
(昔は結婚すると眉毛をそったそうです。)
警護をする人たちです。ひげをはやした人が左大臣。若い方は右大臣です。
宮中で雑用をする人たちです。
ひな祭りは、ひな人形を飾って女の子の健やかな成長と幸せを願う行事です。ひな人形を庶民が飾るようになったのは江戸時代からです。
ひな祭りは、女の子だけの行事に思われますが、もともとは「上巳(じょうし)の節句」「桃の節句」といい、年齢や性別を問わず、幸せを願う邪気払いの行事でした。
昔から桃の木は、邪気を払う力があるとされ、聖なる木とあがめられてきました。邪気の象徴である鬼を退治する話で有名な「桃太郎」が誕生したのも、桃の木に対する信仰が関係しているようです。
起源は古代中国の「上巳(じょうし)の節句」。
日本では、一生の災厄を人形に身代わりをさせるものでしたが、もともとは紙や木、粘土で人形代(ひとがたしろ)を作り、それにけがれを移し、川に流す「流しびな」でした。
七尾市でも、小島町で発見された「小島西遺跡」で、海辺でお祓いしたとされる人形(ひとがた)や馬形(うまがた)と呼ばれる祭祀(さいし)道具が大量に出土しました。
室町時代から江戸時代にかけて「流しびな」からひな壇に飾る「布の座りびな」となりました。
また、暮らしが豊かになるにつれ、質素な人形から現代のような装飾などを豪華にした人形へと変化してきました。
「小島西遺跡」から出土した祭祀道具
石川県埋蔵文化財センター保管
昔から「ひな人形を早く片付けないと婚期が遅れる」と言うのは本当でしょうか?
実は厄を移した人形を早く遠ざけたい、片付け上手の娘にしつけたい、おひな様のように早く幸せな結婚をしてほしい(イコール片付いてほしい)という親心の表れです。
よもぎを入れた緑の餅(厄除け)、ひしの実を入れた白い餅(清浄)、くちなしを入れた桃色の餅(厄病よけ)の3色のひし形の餅に健やかに育ってほしいという願いが込められています。
最近は、写真のような5色のひし餅もあります。黄色は月、赤は太陽を表しています。
関西風は餅をくだいて揚げたあられですが、関東風は米粒をあぶったものが原型です。
皆さんの家は、どちらでしょう?
本来は、桃が百歳(ももとせ)に通じるため、桃の花びらを浮かべた「桃花酒(とうかしゅ)」を飲んでいましたが、江戸時代に白酒ができて定着しました。
エビ(長生き)、れんこん(見通しがきく)、豆(健康でまめに働ける)など、縁起のいい海の幸や山の幸を入れます。
参考「子どもに伝えたい春夏秋冬和の行事を楽しむ絵本」三浦康子監修(永岡書店)
「770のひな人形展」は、ボランティアの皆さんによって開催しています。
七尾地域女性団体協議会理事
佐野 留美子さん
「ひな人形展は、ボランティアの皆さんが中心となって、成り立っています。一人の力は小さいかもしれませんが、市民の皆さんに楽しんでもらいたいという気持ちを持つ人たちが集まることで、小さな輪が大きく広がり、想像を超えたひな人形展が開催できていると思います」と、力強い言葉で話してくれた佐野さん。
「集まる皆さんは、すごいんです。お互いに知恵を出し合い、メーン会場を飛び越え、廊下や店舗などにも飾り付けを施し、毎年スケールアップしているんです。今では、商店街の皆さんにもスタンプラリーの協力をいただき、年々協力してくれる人たちの輪が広がっているのを見るとうれしくてたまりません。これからも、皆さんと一緒に楽しみながら、関わって行きたいと思います」と、充実感いっぱいの笑顔で話してくれた。
東部商店街おかみさん会会長
向 和子さん
東部商店街では以前「ひな見の街」と題して、ひな人形展を開催していた。八百屋なら野菜、花屋なら花を使い、店をイメージする手作りのひな人形を展示していた。「770のひな人形展」が始まってからは、スタンプラリー協賛店として参加している。
向さんは「『ひな見の街』の取り組みから、おかみさんたちと顔を合わせる機会が増え、商店街のにぎわいづくりの話をするようになり、結束力が強くなりましたね。そして、私たち自身が楽しみながら取り組んでいることがいいんですよね」と、人を喜ばせるための極意を語る。
「毎年、趣向を凝らし、飽きさせないことが大事」と。今年は吊るしびなで、「770のひな人形展」と協働し、話題作りと商店街のにぎわいづくりに一役買う。
江戸時代から伝わる「享保びな」出展者
橋本 佐輔さん(中島町中島)
先祖代々伝わって来たひな人形を出展した橋本さん。その人形は「享保びな」といい、享保(1716から1736)年間に作られた貴重なもの。
橋本さんのひな人形が展示に至ったのは、開催事務局がインターネットで、中島商店街でのイベント記事を見たのがきっかけ。
開催事務局から出展の依頼があり、貴重なひな人形の展示を快く承諾したと言う。
「私は91歳になるのですが、正直このひな人形を箱から出すのは、生まれて2回目。数年前に中島商店街のイベントへ初めて出してみたんですよ。その時は一世紀ぶりに出したのではないでしょうか。
そして、この家から外へ出すのは今回初めてなんですよ」と話してくれた。
「享保びなは、現代のひな人形と比べ、江戸時代に美男美女とされた顔や流行った服装で作られたのでしょう。見に来られた方々には、そういった時代背景を感じてもらいたいですね。また、能登には、歴史あるひな人形がまだまだあるはず。これをきっかけに、他からも出てきてくれたら、この展示は、さらに価値あるものになるのではないでしょうか」と思いを込めた。
770のひな人形展開催委員会事務局
村田 充さん
七尾駅前にあるパトリアは、駅前のにぎわいづくりを担う中心的な施設。
その施設を管理運営する七尾都市開発株式会社に勤める村田さんは「770のひな人形展」の開催委員会の事務局で、中心的な役割を担っている。
当初から携わっていた村田さん。
平成24年2月の開催を目指して、スタッフ一丸となって取り組んできたが、ひな人形を集めることや、準備をすることに限界があったそうだ。
「そんな時、女性団体の皆さんの協力をいただけることになり、本当にうれしかったことを思い出します。この人形展は、女性ボランティアの方々がいないと成り立ちません。特に女性の感性が必要です。
さらに感心することが来場者に対して、質問に答えることはもちろんのこと、観光ガイドのように、七尾市の観光や歴史など、個々で勉強をして答えているのです。あの自然と生まれたおもてなしの対応は、素晴らしいですね」と女性ボランティアの偉大さを語った。
「私たち事務局は裏方です。これからも、皆さんと共に盛り上げていきたいですね。また、市民の皆さんに春の風物詩と感じてもらう素晴らしい人形展にしたいですね」と願っていた。
訪れる皆さんが一番気になるのは「この巨大ひな壇がどうやってできるのか?」ではないでしょうか。
巨大ひな壇は、ボランティアの手で、作られています。
早朝から11人の大工さんたちが、高さ4.18メートル、横10メートルある巨大ひな壇の組み立てを開始。
資材には番号が記載されており、設計書どおりに手際よく組み立てられた。
ここからは、事務局スタッフやボランティアスタッフのみで制作。
ひな壇に使う毛せんは長さ10メートルサイズが7本。毛せんを留めるタッカー針を打ちつける数はなんと840本。
巨大ひな壇24段の両サイドに設置される、ぼんぼり50基を取り付け土台をたこ糸で固定し、灯りが付くかをチェック。
パトリア倉庫にある、ひな人形の保管箱は約100箱。ひな壇に設置する段取りを考えながら、スタッフ総出でケースをメーン会場まで運ぶ。
保管箱から紙に包まれたひな人形を丁寧に取り出し、破損したものがないかを確認。
問題のない人形は段ごとに会場のフロアに並べる。
大切に保管している人形だが、必ず破損が出てしまう。
その都度、細かい補修を繰り返す。
ピンセットやペンチを片手に、細かい作業が続く。
人形や道具などが包まれていた紙を、片付ける時にも再利用するため、1枚1枚伸ばしていく。
その数、約1500枚!破れやすいため、注意して作業が進められた。
いよいよ、ひな壇に人形を設置する作業。
お内裏様とおひな様の1組ずつを、男性ボランティアが手渡しで上段へ。
1組ごとの幅が均等になるように、その都度微調整が行われた。
女性を中心に33団体と市民ボランティア、2日間延べ120人が参加。
一人一人が息の合った連携プレーを見せ、設置作業もいよいよ完成間近。
人形を運ぶ人や修復する人、力仕事をする人や確認作業をする人など、一人一人の手で作り上げた巨大ひな壇が今年も完成した。
3年前、市民の誰もが度肝を抜かれた「770のひな人形展」。当初は、七尾市をもじって、約770体のひな人形を並べる予定でしたが、完成してみると24段の巨大ひな壇には、約1000体が並びました。こんな姿を、誰が想像できたでしょうか。
この取り組みの成果は、3つあります。一つ目は、ひな人形をキーワードに駅前の賑わいと周辺商店街への波及効果を生んでいること。
二つ目は、ボランティアの皆さんの手で作り上げ、価値ある人形展となっていること。最後に最大の成果は、ボランティアで作業をすることで、人と人とをつなげ、人の生きがいを作り、人の心を豊かにさせ、訪れる人にまで感動を与えること。
その成果から、人から人へとうわさが広がり、年々来場者が増え続け、昨年は3万人を超えました。
3月3日の「ひな祭り」は終わりましたが、この特集をご覧になり、ぜひ、3月15日まで開催している「770のひな人形展」をご覧ください。
日時:3月15日(日曜日)まで
午前10時から午後6時(土曜日、日曜日午後5時まで)
場所:パトリア4階フォーラム七尾
入場料無料
詳細は「インターネットパトリアで検索」
問い合わせ
第4回770のひな人形展開催委員会事務局
電話54-0770