タイトル:七尾里山里海百景

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概要

七尾湾を中心とした豊富な資源から漁師町としても栄え、また能登らしい固有の農業文化も育み守られてきた、七尾市の里山里海の百の景色を紹介する電子ブックです。

41産業七尾里山里海百景035りょうイサザ漁春、産卵のために河川を遡上するイサザ。それをとる方法は太古から変わらない伝統漁法であるイサザはスズキ目ハゼ科に属する魚で、標準和名はシロウオ。イサザは北陸の地方名である。全長は5cmくらい、腹に斑点があり、全身が透き通って見える。春、雪どけ水が流れ出す頃、この魚は産卵のため、七尾湾沿いの河川を遡上してくる。「イサザが上ってくれば春祭りは間近」。イサザ漁が盛んだった中島地区の人たちにとってこの魚の遡上は待ちに待った春の到来を実感させてくれるものだ。イサザをとる方法は昔からほとんど変わっていない。大きく分けよつであみると、四手網を川に沈めてイサザが通過するのを見計らって網を引き上げる方法と、袋網の開口部を下流に向けて浅い川に沈めておき、遡上して網にかかったイサザを捕る方法の2つである。昭和の初めころ、熊木川だけで約100ほどの四手網が仕掛けられていたというが、その後、川の環境が大きく変わり、その数は激減し、今では七尾市全体でも漁をする人は数える程度である。イサザは産卵するために川底のきれいな清流が必要であり、全国的にも良好な生息環境の減少とともに数を減らしている。環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類であり、保全状態を注視していく必要がある。石川県では資源保全のため、イサザ漁は漁業権を持っている人しか行えず、網の張り方などにもルールがある。漁期は、3月1日から5月末までだが、田植えが始まるころは川の水が濁るようになってとれる数が減り、またイサザは目が赤くなるとおいしくないとも言われ、実際の漁のピークは4月下旬までという。隣接する穴水町とともに七尾湾の春の風物詩、特産品として人気のあるイサザ。とれる量は天候など年により大きく変わるそうだが、年々減少傾向に歯止めがかかっていない。イサザは死ぬと体が白くなり、味も悪くなるため、生きたまま流通させる必要がある。生きたイサザを酢醤油などで食べ、その喉ごしを楽しむ「おどり食い」が有名だが、卵とじや揚げ物もおいしい。また釣餌としても重宝されている。参考文献―書籍『図説中島町の歴史と文化』(中島町)「近現代」P 164-165―ホームページ『自然人ネット』(橋本確文堂)「イサザ」場所七尾市中島町袋網を使った漁の様子体が透き通ってきれいなイサザ