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令和6年能登半島地震復興公演として、8年ぶりに再演された「肝っ玉おっ母と子供たち」。全20回の公演には、大勢の観客が詰め掛け、仲代達矢さんの圧巻の芝居に感動の涙を流した。観客の多くは県外からの来訪者で、本公演をきっかけに被災地の「今」を目の当たりにし、思いを寄せた。
この作品は、17世紀にヨーロッパで繰り広げられた三十年戦争を舞台にした反戦劇で、3人の子どもたちを引き連れて軍隊の後を付いて歩き、兵隊たちの食材や備品を売ることで生計を立てる商人アンナ・フィーアリングを主人公に、戦争の悲惨さを描いている。
アンナを演じる仲代さんは、迫真の演技を見せ付け、戦争で3人の子どもを奪われ独りとなったアンナのラストシーンは観客の心を奪った。
劇場内は万雷の拍手で溢れ返り、二度三度と繰り返されるカーテンコールの間も鳴り止むことはなかった。
本作は本来であれば、七尾市制20周年記念公演として令和6年秋に上演される予定だった。前回の「等伯-反骨の画聖-」では演出に専念していた仲代達矢さんが、役者として再び舞台に上がることを決めていた。
令和5年12月に行われた記者発表では「戦争体験者として、戦争に対する思いや批判を続けるのが私の務め」と本作を上演する意図を語るとともに、「精神を切り替えてもう一度役者として頑張っていきたい」と決意をにじませていた。
しかし、令和6年元日に未曽有の天災が発生。能登全体が見たこともない光景となり、公演も延期を余儀なくされた。
発災後間もなく、無名塾による復興支援が始まった。災害ごみを搬出するボランティアなどに、昨年1月~5月の間で延べ240人が取り組んだほか、能登演劇堂が主催する市立図書館での親子向けイベントへの参加や能登演劇堂での詩の朗読イベントなど、さまざまな形でエールを送った。
そして昨年8月、本作が震災からの復興公演として上演されることが発表され、2月には公開インタビューが行われた。仲代さんはその壇上で「能登の皆さんとさらに心の交流を深めていきたい。少しでも力になりたい」と思いを明かしていた。
仲代さんの思いに呼応したのか、本公演では、県外からの来場者が多かったという。
実際に、来場者からは「観光することで少しでも役に立てればと思い訪れた」「仲代さんが被災地に気持ちを寄せてくれた公演なので、何としても来たいと思った」という声が聞かれた。
公演期間中に能登演劇堂の展示ホール内に出店していた地元の皆さんからは「お客さんからの『頑張ってね』の声がうれしかった」「能登を応援しようという気持ちが伝わってきた」と笑みがこぼれた。
仲代さん、そして無名塾の能登への思いが詰まった本公演は、能登に思いを寄せる人と被災地に生きる私たちの心をつないでくれた。
写真説明
撮影:石川純
本作を観劇していかがでしたか?
公演を行うには、演者だけではなくさまざまな役割を担う人の存在が必要だ。
無名塾の能登演劇堂公演では、市民がホールスタッフなどのボランティアやエキストラとして参加することが恒例となっており、本公演も多くの市民が携わった。
また、今回の公演では、県外からのエキストラ参加者も見られ、市内外のさまざまな人が「復興公演」を盛り上げた。
山下敏博さん
舞台に立つ仲代さんの姿はとても刺激になります。
無名塾の皆さんも親しくしてくれて、これまでの交流で築いた絆を感じました。演劇で生まれたかけがえのない出会いを大事にしていきたいです。
伊藤裕子さん
仲代さんの気迫と無名塾の皆さんのチームワークは近くで見ていて圧巻でした。能登の人の良さを感じたので、また足を運びたいです。
市川裕之さん
能登に来ることが復興につながると思い、応募しました。人々の心を打つ作品に携われて幸せです。何よりも価値のある経験になりました。
佐藤牧子さん
復興のために少しでも力になれたらと参加しました。観劇された人から「一生の思い出になる」と声を聞き、心が元気になっていると感じられました。
原康長さん
8年前の「肝っ玉おっ母と子供たち」に感動し、今回のエキストラに参加しました。地元の人が協力して公演を作り上げているのが、とても素晴らしいです。
写真説明:(左から)伊藤さん、市川さん、佐藤さん、原さん
公演を終えて
復興半ばの公演で、客足はどうだろうかと心配した部分もありましたが、会場いっぱいにお客さまが入ったことで、少しほっとした気持ちがあります。
県外から観劇に来られた方に、多少なりとも能登の現実に触れていただけたことが、私にとっては何よりもありがたかったです。
そして、被災した皆さんが、このお芝居で少しでも力を得ていてくれたらと、そう願うばかりです。
被災地の能登にたくさんの人が詰め掛けた
実にありがたいことです。地震直後にも塾員たちがボランティアを行いましたし、仮設住宅の訪問を含めてやれることは何でもやろうと思っていました。
しかし、実際のところ私たち役者は、何でも器用にできる人間ではありません。やはり、何かの役を演ずることでしか、お世話になったお返しはできないものと思っていました。
その機会を与えていただいたことに、とても感謝しています。
被災した能登・七尾の皆さんに向けて
戦争も、地震や豪雨などの自然災害も、同じようなところがあります。
誰しも平穏な暮らしと、家族を失うことのない平和な日常を願っていますが、そんな私たちの想いとは裏腹に、突然やって来て不幸の旅路に引きずり回してしまうのが、戦争や自然災害です。
でも、人間は負けていません。太古の昔から、何度も何度も、その「どん底」から立ち直っています。私たちの中に潜む、そんな人間の力を信じましょう。たとえ、課題や困難は、多々あるとしてもです。
能登演劇堂開館30周年・無名塾交流40周年記念
無名塾「幽霊」
10月10日(金曜日)~15日(水曜日)