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日本最大級と称される高さ約12メートル、重さ約20トンのでか山。鍜冶町、府中町、魚町では、4月の毎週末に若衆から年長者まで総出で、でか山を組み立てる。
組み立ては、長年の経験を積んだ名人の指導のもと、クレーンを使って、上へ上へと組み上げる。4階建てのビル相当の高さで行う作業は、経験と度胸が必要だ。鍜冶町の山建て主任を務める藤橋和彦さんは「山が好きじゃないと務まらない」と話す。年長者が若衆に指示を出し、若衆は声を掛け合いながら、作業を進める。「山建てを通じて町が一つになっていく。」その言葉通り、でか山づくりで培ったチームワークがでか山の運行の原動力となる。
鍜冶町藤橋和彦さん
でか山の運行に弾みをつける木遣り。木遣り唄には楽譜はなく、各山町で先代から後代へと口伝えで唄い継がれてきた。
府中町の印鑰神社の社務所では、4月上旬から子ども木遣りの稽古が始まる。独特の唄い回しや一つ一つの動作など、手取り足取り教わる。木遣りは、観衆の注目を浴びる花形だ。だからこそ、練習でも厳しい声が飛ぶ。木遣り責任者の藤岡信幸さんは「でか山の上で唄う木遣りは何事にも代え難い。子どもたちには、山を好きになってもらいたい」と指導に熱が入る。「木遣りに完成はない。今年も勉強だ」と自身の木遣りにも厳しい。
府中町藤岡信幸さん
軒先をかすめるように進むでか山の方向を調整するのは、梃子衆の梃子掛けのタイミング。梃子衆は後見役の合図で梃子を掛ける。そのため後見役の役割は重く、長年の経験が必要だ。
魚町の後見役を務める澤越昌宏さんは、的確な指示で梃子衆からの信頼も厚い。今年は、曳き手が例年の半分程の人数で、3年ぶりの運行。予定どおりに到着できるか―。「曳き始めの4日は緊張しかなかった。」と話す澤越さん。それでも、魚町の団結力で予定より1時間も早い到着だった。「皆の動きが良く、順調に進めた。」と安堵の表情を見せた。今年入ってきた若衆に向けて「大変なことも多いけど、山を好きでいてほしい」と目を細めた。
魚町澤越昌宏さん