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更新日:2019年10月4日

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広報ななお
七尾ごころ

令和元年(2019年)10月号No.181

学生たちの挑戦
この町が大好きに
なりました!

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演劇のまち×ニチゲイ
「演劇のまち」中島。ここに日本大学芸術学部演劇学科(ニチゲイ)の学生17人が、8月10日から約3週間滞在しました。
目的は、能登での生活で得たものを演劇などの作品にすること。その名も「ノトゲキ」プロジェクト。
普段は東京で生活している学生たち。都会から離れた暮らしの中で、何を感じ、どう表現するのか。
中島町での滞在開始から作品が完成するまでを追いました。

ノトゲキ実行委員長滝腰教寛(たかひろ)さん
中島町出身の舞台俳優。現在は主に東京で活動し、ノトゲキの発起人として運営や学生のサポート役を担いました。

長年持ち続けた夢

地元の中島町で演劇人として何かをしたい。日本大学卒業後約10年間持っていた思いを、日本大学芸術学部演劇学科の藤崎周平教授や地域おこし協力隊の本谷智子さん、中島町在住の丸山英邦さん、他にも多くの人に相談しました。地域住民に喜んでもらえて地域の特性に合うものを考え「学生を呼び込んだら面白いのでは」という案に辿り着きました。
こうして始まったノトゲキ。当初、学生は2人だけの予定でした。「あと数人一緒にやりたい人がいるかも」と演劇学科内で募集すると希望者は15人。想定外の多さに感じたのは、大所帯でうまくいくのかという不安。実際、滞在場所とアルバイト先の確保や食料の調達には苦労しました。最終的には多くの人に助けていただき、ノトゲキを進めることができました。ご厚意で家を貸してくれた中島町在住の水上彌八郎さん。アルバイトの受け入れ先となってくれた9カ所の事業所の皆さん。食料を分けてくれたり学生たちに多くの体験をさせてくれたりとお世話になった地域住民の皆さん。本当に感謝しかありません。
学生たちが滞在中に吸収したものを作品にした4つの企画。それぞれ着眼点も表現の方法も異なります。作品を見て、ノトゲキを終えて、助けてくれた皆さんと学生が口にするのは「楽しかった」という言葉。目指していた以上のものになったと思い、何よりうれしかったです。演劇は人と人をつなぐツールだと私は思います。新たなつながりを増やしていけるよう、今後もノトゲキを運営していきたいですし、ノトゲキが終わっても学生たちと中島町の皆さんにはつながり続けてほしいです。


4作品の企画者の思い

受け入れてよかったと思ってもらえたらベスト
作品名『この町で過ごした私たちのこと』
構成・演出
生艸東子(いぐさとうこ)さん宇田奈々絵さん
約3週間の記録を、ドキュメンタリーに近い形で表現しました。台本はほぼありません。イメージ以上に地域の人が優しく、この環境だから共同生活ができたと思います。一生分の夏を過ごしたような、充実した時間を過ごさせてくれた中島町の皆さんに「受け入れてよかった」と思ってもらえたらうれしいです。

地元のものを取り入れた日本舞踊に
作品名『-舞踊-猿田彦』
構成・創舞
鈴木翔媛(しょうえん)さん
当初は猿田彦を女方として創舞するつもりでした。本物の衣裳や面などを借りることができたため、童心溢れる子どもの精霊のような存在に変更。正直、地域の皆さんに受け入れてもらえるか不安でした。踊りを含め、日本舞踊特有の芝居のような動作からストーリーを感じてほしい作品になりました。

誰かの話を聞いて自分の記憶を思い起こす感覚を味わってほしい
作品名『あなたのとぼくの』
構成・演出
土屋康平さん
能登の人の話を劇にしよう―中島町を満喫して話を聞き忘れ、計画は断念。大人が祭りを楽しむ。野菜をくれたり体調を気遣ってくれたりと無償の愛を与えてくれる。地域の雰囲気や人柄に、衝撃を受けるとともに思い出した、祖母の話を作品にしました。作品を見て、皆さんの記憶も思い起こしてほしいです。

滞在生活を終え、これからどう生きるのか
作品名『生活を大きく拡げて、パノラマと見なせ』
構成・演出
三橋亮太さん
4年生になり、将来の生き方を考えるようになりました。滞在生活を経験し、音楽を聞いて1人で過ごしていた人が、イヤホンを付けなくなるなど、みんな変化していきました。個人の空間と誰かと共有する空間、他人と家族。境界線を探りながらこれからどう生きていくか、作品を見た人にも考えてもらいたいです。

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中島町での生活
8月10日、地域住民に向けてノトゲキの説明会が行われました。プロジェクトが始まるまでの経緯や思い、受け入れてくれたことへの感謝などを口にする学生たち。初めは緊張のせいかどことなく硬い表情をしていましたが、説明会後の懇親会では住民と打ち解け、会場はにぎやかな雰囲気に包まれました。
滞在中に計画されたのは、新宮納涼祭や地域のイベントへの参加、地元中高生に向けたワークショップなど、地域住民との交流を深めるためのプログラム。その様子をのぞくと、毎回目にするのは笑顔でした。学生たちに七尾の印象を聞くと「人が優しい」「親戚のように受け入れてくれる」と地域住民の人柄の良さに衝撃を受けたことをうれしそうに話してくれました。初めて体験する農業などのアルバイトや奉燈の担ぎ手。日が経つにつれてつながりが増え、一緒にバーベキューをしたり海に入ったりすることもありました。

楽しいことばかりでは…
明るい学生たちも稽古のときは真剣な表情に。初稽古では、演出に悩む企画者の姿がありました。どう表現したら伝わるか、これは絶対に取り入れたいなど、悩みながらも稽古に取り組む学生たち。さまざまな考えが混ざり合い、作品を少しずつ完成させていきました。
17人の共同生活は大変なことも。違う環境で生きてきた者同士が同じ空間で過ごすことで、ときにはぶつかり合います。譲れるところを考えたりルールを作ったりしながら、学生たち自身も変わっていきました。

いよいよ本番
約3週間の滞在を終え、舞台に立つ学生たち。本番前には発声練習や集中する姿を見せていました。幕が上がると堂々と作品を発表。地域住民への感謝を伝える場面では涙ぐむ学生も。4つの企画、それぞれ違った演出で最後までやり遂げ、会場からは拍手が沸き起こりました。
「また来たい」「ここに住みたい」と学生たちは話し、「また来てほしい」「楽しかった」と中島町の人は話しました。約3週間の濃厚な夏休みを過ごした学生たちは、これからも演劇が結んだ縁をつなぎ続けていきます。

(写真説明)
1.住民向け説明会後の懇親会。「これからお世話になります」と会話が弾みました。
2.地元の農家団体、能登新鮮組でのアルバイト。ネギ畑の雑草を取り除きました。
3.七尾の新鮮な魚介を使った手巻き寿司パーティ。あっという間にお皿は空に。
4.能登中島駅での「未来郵便」。1年後の自分宛てに手紙を書きました。
5.初稽古では企画者が演出の指導をしました。
6.新宮納涼祭に参加。15年以上出されていなかった中奉燈を新調しました。
7.日本舞踊の初稽古。企画者の指導に熱が入っていました。
8.カフェ遊帆でのアルバイト。常連のお客さんと話に花が咲きました。
9.中島地区コミュニティセンター釶打分館での流しそうめん。地元の子どもたちと仲良くなりました。
10.中高生向けのワークショップ。ゲームを通して、演劇に必要な想像力やコミュニケーション力などを鍛えました。
11.本番直前。円陣を組んで気合を入れました。

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ノトゲキを見てどう感じましたか?

こう感じました
わざわざ来たかいがありました。能登の人の支援の大きさ、深さを感じ感動しました。
牛島千寿さん(神奈川県)

こう感じました
演劇で田舎ににぎわいを作ってもらったいい企画だと思う。若い人たちのエネルギーを感じるいい作品でした。
鴻野(こうの)俊雄さん節子さん(中島町中島)

こう感じました
祭りの共演に中島町民の心をつかまれました。見る人の想像をかき立てる内容の劇もよかった。今後もこういう輪が広がればいいなと思います。
仁介(にすけ)三代子さん(中島町河内)

新宮納涼祭で一緒に奉燈を担いだ藤瀬壮年団
丸山力洋(りきしょう)さん
初めは安全面などで心配はありました。でもせっかく来てもらったからには楽しんでほしい。奉燈を担ぐなど七尾らしい体験をしてもらえたかと思います。作品を見て、演劇が好きという気持ちが伝わってきました。アルバイトをしながらの生活で時間がない中、よく完成させたなと感心しました。ぜひ今後もこの企画を続けてほしいです。

アルバイト受け入れ先の農家団体能登新鮮組
大森幸太郎さん
舞台に立つと、学生たちの雰囲気が変わりました。アルバイトで来てくれていた土屋君の演出は面白かったし、猿田彦が出てくる演出では、5歳の子どもが見入っていました。それほど魅力があるのだと思います。いつかプロの役者になって能登演劇堂の舞台に戻ってきてほしいですね。

ノトゲキを振り返る
ノトゲキ運営委実行委員
丸山英邦(えいほう)さん
七尾市を盛り上げたい、演劇を通じて何かしたい、という滝腰さんの気持ちに共感しました。「演劇のまち」らしいことが出来たと思います。私が小学生の頃に中島町で合宿をしていた無名塾の人と、彼らをお世話していた地域住民は、今でも交流を続けています。今回参加した学生の皆さんも同じように、再び七尾を訪れ、地域の人とつながり続けてほしいと願っています。来年以降も滞在制作の企画を続けていきます。これをきっかけに、いろんな形で演劇に関わってくれる人が増えたらと思っています。

日本大学芸術学部演劇学科3年生
清水渓菜(けいな)さん
約3週間の共同生活は、一日一日がとてもパワフルでした。新宮納涼祭などでの非日常的な大きな感動から、家の前をタヌキが通った!といった小さな感動まで、毎日たくさんの感動を体験しました。今年が初めての試みとなったノトゲキ。何もかもが手探り状態の中、何とか企画を成功させようという先輩の頑張りを、唯一3年生だった私が次に繋げていきたいです。地域の皆さんからは「来年もまた来てください」と言ってもらえてとてもうれしかったです。来年以降、地元の人が毎年楽しみにしてくれるような、中島町に根付いた企画になればと思っています。

日本大学芸術学部演劇学科4年生
牛島青(じょう)さん

他力本願。ネガティブな意味で捉えられることが多い言葉ですが、本来は「全ての人間は他者の力によって生かされている」という意味だと中島町の人に教わりました。毎日のように分けてもらう野菜や地域の皆さんのご厚意、祭りやイベントなどでの強い共同体の結び付き。滞在中、さまざまな形でこの言葉を実感しました。
舞台を作ることも、他者を認めることが前提にあります。それは、時に痛みや苦しみを伴います。でもだからこそ、想像以上の作品と喜びが生まれる。中島町の温かさから、演劇人として忘れてはいけないものを学ばせていただいた23日間でした。

 

お問い合わせ

所属課室:企画振興部広報広聴課

〒926-8611石川県七尾市袖ケ江町イ部25番地

電話番号:0767-53-8423

ファクス番号:0767-52-0374

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