タイトル:七尾里山里海百景

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概要

七尾湾を中心とした豊富な資源から漁師町としても栄え、また能登らしい固有の農業文化も育み守られてきた、七尾市の里山里海の百の景色を紹介する電子ブックです。

食七尾里山里海百景06476まきぶり巻鰤里海の恵みをもてなしの心で編んだ、保存食北陸では、11月も下旬になると、鉛色の空を裂くように激しい雷が鳴り響ひょうき、強い風にあおられた雹やあられが横なぶりに叩きつける。「雪おこし」、もしくは「鰤おこし」と呼ばれるこの地域独特の気候である。それは名前の通り、鰤の漁獲シーズンに入ることを示す合図でもある。日本有数の鰤の水揚げ量を誇る七尾で、冬に獲れた脂の乗った鰤を、年中美味しく食べられるようと工夫して生まれた保存食が、「巻鰤」である。「巻鰤」の作り方は決して難しくないものの、相応の手間と時間がかかる。まず、水揚げされた寒鰤をさばき、塩漬けして2週間ほど陰干しする。その後、鰤の身にビニールを巻き、さらに虫がつわらかないように藁でくるむ。それらを縄でぐるぐると巻き、固定する。そして、半年間ほど軒先で寒風にさらし、熟成させて完成である。その味わいはというと、これがうまい。旨みが凝縮され、塩味もよく馴染む。背中部分はあっさり、脂ののったトロの部分は濃厚と、部位によっても味わいが異なるのも興味深い。スライスしてそのまま食べても良いが、清酒やみりんに浸すとより風味が増すという。サラダやパスタ、茶漬けにも合う。かつては、「家の軒先に吊るされる巻鰤」というのは馴染みの光景であった。しかし今ではその技を伝える者も、作る者も減っている。そんな中、「大呑グリーンツーリズム推進協議会」では、代々その技法が伝えられているという南大呑地区の池岡家の伝統を継承しようと、「巻鰤体験」の取り組みを行っている。元来は、家族や親戚など、多くの人が家に集まる夏の盆時期のごちそうとして重宝されてきた「巻鰤」。それは自然の恵みと人々の知恵が生み出した美しい味わいなのである。場所大呑グリーンツーリズム推進協議会/七尾市南大呑地区そのままスライスして食べるのも贅沢な楽しみ方食べやすく袋詰した商品も開発されている巻鰤を巻くようす巻鰤