タイトル:七尾里山里海百景

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概要

七尾湾を中心とした豊富な資源から漁師町としても栄え、また能登らしい固有の農業文化も育み守られてきた、七尾市の里山里海の百の景色を紹介する電子ブックです。

71食七尾里山里海百景059イイダコいいだこ飯蛸の一かたまりや皿の蓋(夏目漱石)イイダコは、マダコ科に属するタコの一種だが、マダコやミズダコに比べて小ぶりで、ぬめりが少なく調理しやすいのが特徴だ。また、熱を通してもあまり固くならず、ほっこりした味わいが楽しめることも人気の理由である。川柳に、「飯蛸は丸かぶりして味が出る」とあるように、丸のまま食べるのが美味しい。秋からが旬と言われるが、卵巣が発達し、頭(胴体)がはち切れるようになる春物も、絶品である。魚で卵を持ったものは「子持ち」と呼ぶが、イイダコの場合は「飯持ち」と呼ぶ。その字の通り、卵巣は米粒を思わせる食感である。「飯持ち」のメスは大切にされる。オスは「すぼけ」と呼ばれて少々低い待遇に甘んじることになるが、味はオスメス変わらずおいしく、煮る、焼く、揚げるなど、楽しみ方も豊富である。茹でる前にまず墨を取り除き、一つまみの塩でもみ洗いし、ぬめりを取ったら熱湯に足元から入れる。こうすると足が四方に広がって、形良く茹で上がる。身を柔らかく食べたい時は、塩もみの塩をひかえ、ぬるま湯でヌメリを取る。良いイイダコの見分け方は、白っぽくなく、目がりんもん澄んで輪紋がくっきりしているものだという。和倉港はイイダコの良好な釣り場でもある。秋のイイダコをとるときは、「ヒキズリ」という漁法が適している。長さ5cmほどの白い瀬戸物に糸をつけ、これを水中に投げて浅いところまで引きずってくる。そうするとタコが追いかけてきて、くいついて離れないので、簡単にとることができる。時間的には朝のほうがたくさんとれるという。それに対して「ミツケダコ」というのは、水温がまだ低く、タコが沖にいる、春に行う漁法である。「ミツケダコ」は文字通り、目で獲物を見つけ、それをてもり竹ヤスという手銛で突くという方法。朝、凪の良い時、岸をみていると、「なんとなくモコっとしとる」ため、玄人はそこにタコがいるとすぐわかるという。一方、「素人は絶対にみつけられん」とか。参考文献―書籍『新修七尾市史13民俗編』(七尾市)「農村の民俗」P 277場所和倉港/七尾市和倉町地図へ朝日が昇る頃、イイダコ釣りをする人々「ヒキズリ」で釣り上げられたイイダコ