タイトル:七尾里山里海百景

ページ
37/120

このページは 七尾里山里海百景 の電子ブックに掲載されている37ページ目の概要です。

「このページを開く」か「最初のページを開く」で、ぞれぞれのページが開きます。

概要

七尾湾を中心とした豊富な資源から漁師町としても栄え、また能登らしい固有の農業文化も育み守られてきた、七尾市の里山里海の百の景色を紹介する電子ブックです。

37産業七尾里山里海百景031ななおわんてんねん七尾湾(天然のいけす)古くから里海として機能してきた、内湾的要素の強い海域。閉鎖性海域特有の生態系が豊かな海の恵みとなるあなみずまちえびすざき七尾湾とは、穴水町恵比須崎と能登かつおざきうのうらまちかん島えの目町の勝尾崎、七尾市鵜浦町観のんざき音崎を結ぶ線、および沿岸に囲まれた海域を指す。日本海に突き出た能登半島の付け根(東側)に位置する湾で、中央には能登島が浮かぶ。こうした地形が、日本海側では珍しい内湾的要素の強い海域を作り出している。波や潮など外海の影響が少ない穏やかな湾内には、山からの栄養塩類を含んだ水が川から流れ込み、閉鎖性海域特有の生態系が育まれて豊かな海の恵みとなる。その恵みを存分にうけて暮らす沿岸の人々にとって七尾湾は古くから「里海」として機能してきた。湾内は、大きく三つの海域に分けられる。能登島の北側にあたる部分が北湾、西側が西湾、南側が南湾だ。西湾・北湾ではかきナマコ漁や牡蠣養殖が盛んに行われてきた。ナマコ漁は奈良時代、牡蠣養殖は明治から始まったといわれる。北湾は最大水深約50mで、夏でも水温が上がりにくいことから、近年はトリガイの養殖も行われている。また北湾は、トラフグをはじめさまざまな魚たちの産卵場となっていることが近年の調査で明らかになっている。これは、北湾に群生するアマモなどの海藻が藻場を形成することで、海水を浄化し、稚魚たちが天敵から身を隠す場所ともなっていることが関係している。市街地に面した南湾は、市街地から流れ込む生活排水などの影響もあって、七尾湾内ではもっとも富栄養化が進んでいる。だが、七尾湾全体でみると、外海と接する大口瀬戸・小口瀬戸と呼ばれる海域を通して適度な海水の循環があり、全国的に広がる磯焼けもほとんど見られず、よい環境が残っているといえる。参考文献―書籍『自然人No.26 2011年秋号』(橋本確文堂)「特集生物多様性」P 28―ホームページ『閉鎖性海域ネット』(環境省)「七尾湾」海面からも豊かな藻場を見ることができる七尾西湾の夕景近年養殖が始まったトリガイ